海外情勢

ブラジルでコロナ拡大、感染力強い変異株 政府の無策が要因か

 【ワシントン=住井亨介】南米ブラジルの新型コロナウイルスの感染拡大が止まらない。累計の感染者数はインドを抜いて再び世界2番目となり、新規感染者数でも米国を上回る。ブラジル由来の変異株は感染力が強く、感染拡大の背景となっている。

 米ジョンズ・ホプキンズ大の集計によると、17日のブラジルの新規感染者数は約9万人。累計の感染者数は約1169万人、死者数は約28万5000人とインドを抜いた。

 感染拡大の大きな原因とみられているのが、北部の都市マナウスで発生したとされる変異株だ。米CNNテレビ(電子版)によると、感染力の強さは通常ウイルスの最大2・2倍にも達し、ブラジルの少なくとも6州に感染が広がっている。

 一部では医療崩壊も起きている。ブラジルの研究機関、オズワルド・クルス財団によると、ブラジルの24州で集中治療室(ICU)の占有率が80%を超えたほか、15州では90%超。CNNは、南部リオグランデ・ド・スル州では103%に達したと報じており、同財団は「ブラジルの歴史で最大の医療制度の崩壊だ」と指摘する。

 自ら感染したものの新型コロナを「ただの風邪」とするボルソナロ大統領が有効な手立てを講じないことも要因の1つとみられている。事態を受けて地方政府は独自に次々とロックダウン(都市封鎖)に踏み切っているが、「泣き言はもうたくさんだ。いつまで家に籠ってすべてを閉めているつもりだ」と非難するボルソナロ氏との乖離(かいり)は大きい。

 ワクチンの接種も遅れ気味だ。ブラジル国家衛生監督庁は1月、英製薬大手アストラゼネカと、中国の製薬大手である科興腔股生物技術(シノバック・バイオテック)のワクチンの緊急使用を認可したばかり。少なくとも1回の接種を受けた人はわずか4%にとどまっている。

 米紙ニューヨーク・タイムズ(電子版)によると、ブラジル型変異株は米国など24カ国に広がっており、各国とも「対岸の火事」ではいられない。世界保健機関(WHO)で緊急事態対応を統括するライアン氏は「ブラジルでの話は、われわれが必要な対応をやめればどこでも起きうることだ」と警告している。

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