【ワシントン=黒瀬悦成】バイデン米政権の外交・安全保障政策を主導するブリンケン国務長官とサリバン大統領補佐官(国家安全保障問題担当)は18日(日本時間19日午前)、中国の外交担当トップの楊潔●(=簾の广を厂に、兼を虎に)(よう・けつち)共産党政治局員、王毅国務委員兼外相と米アラスカ州アンカレジで初の直接会談に入った。
ブリンケン氏は会談の冒頭、新疆ウイグル自治区での人権侵害や香港での民主派弾圧、台湾情勢、米国に対するサイバー攻撃や同盟諸国に対する経済的威迫などを議題として提起すると述べ、「中国による一連の行動は、世界の安定維持の役割を果たす『ルールに基づく秩序』を脅かしている」と批判した。
また、「ルールに基づく秩序に代わるものは『力の正義』や『勝者総取り』の世界であり、世の中ははるかに暴力で不安定となる」と警告した上で、米国が民主主義諸国・地域を主導し国際秩序の強化に関与していくと表明した。
これに対し楊氏は、米中両国は「世界の平和と安定に対する重大な責任がある。気候変動問題と経済回復は共通の関心事項だ」としつつ、「米国には米国の、中国には中国の様式の民主主義がある」と主張。また、ウイグルや香港、台湾は「内政問題だ」として米国が介入するのを強く牽制(けんせい)した。
楊氏は、米国が「冷戦時代の思考」から脱却すべきだとも語るなど、最初から激しい言葉の応酬が展開された。
バイデン米政権発足後、米中外交トップによる直接会談は初めて。会談は2日間にわたり行われ、共同声明は発表されない見通しだ。
中国は、今回の会談を1月の米政権交代を受けた新たな「戦略的対話」と位置づけ、対米関係の改善につなげたい考えだ。
一方、ブリンケン氏は中国との関係を「21世紀における最大の地政学的な試練」と見なし、同盟諸国と連携して中国に厳しい態度で臨む立場を堅持する。会談も今回の「1回限り」との認識で、米中間の隔たりが改めて浮き彫りとなった。
ブリンケン氏は15~18日の日韓歴訪や、先の日米とオーストラリア、インドの4カ国(通称クアッド)によるオンライン首脳会合の成果を踏まえ、中国への圧力を強めていく方針だ。