海外情勢

中国全人代 国防費を着実に増額、AI活用などで質も向上

 中国の習近平政権は5日に開幕した全国人民代表大会(全人代)に前年比6・8%増となる1兆3553億元(約22兆6200億円)の国防予算案を提出した。米国に次ぐ世界第2位の規模で、予算全体が0・2%減となる中、高い伸び率を維持した。李克強首相は同日の政府活動報告で「国家の主権と安全、発展利益を守る戦略能力を高める」と述べて、人工知能(AI)の活用も含めて軍事力を質量ともに拡充する方針を示した。

 国防予算の伸び率は、新型コロナウイルス禍で抑えられた昨年度の6・6%を上回り、前年からの増加額は約873億元(1兆4500億円)となった。総額では、日本の令和3年度防衛予算(5兆1235億円)の4倍以上となり、中国が軍事的な圧力を強める台湾と比べると約16倍、増額分だけで台湾の今年度国防予算(約1兆4200億円)に匹敵する額となった。中国の国防費の実態は公表額を上回るとの見方が主流で、実際の差はさらに大きいとみられる。

 中国は米国を念頭に、2035年までに軍の現代化を実現し今世紀半ばに「世界一流の軍隊」とする目標を定めており、裏付けとなる国防費を確実に増加させた。このほか「公共安全保障支出」に前年比0・7%増の1850億元(約3兆900億円)を計上し、国内の治安維持も引き続き重視する姿勢を示した。

 李氏が政府活動報告で言及した「戦略能力の向上」は昨年の報告にはなく、軍の能力を一層増強させる方針を示したものだ。14次5カ年計画案では、機械化や情報化に加え、人工知能(AI)を活用する「知能化」を加速するとした。

 一方、李氏は「各方面・分野の安全保障リスクに統一的に対応する」とも述べ、中国を取り巻く安全保障環境が悪化しているとの認識もにじませた。27年の人民解放軍の「建軍100年奮闘目標」については科学技術や人材育成などの面で軍隊を強化すると述べたが、5カ年計画案でも具体的な目標は示さなかった。

 全人代報道官は4日、海外の警戒を意識し、中国の国防費は「経済発展の水準に歩調を合わせたものだ」と強調した。(田中靖人)

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