「OPECプラス」は4月の原油の協調減産について3月の規模をほぼ維持するとし、大産油国のサウジアラビアも自主的な追加減産の継続を表明した。原油価格が上昇基調にあった中であえて需給の引き締まり観測を促す判断を下し、原油価格の下支えを重視する姿勢を示した。一方、消費者に身近なガソリンの小売価格は約1年ぶりの高値水準にあり、今回の主要産油国の決定でさらに上昇圧力がかかる可能性がある。
「サウジが絵を描いたのだろう。原油価格の維持・回復に対するサウジの強い意志を感じさせた」。ニッセイ基礎研究所の上野剛志上席エコノミストは今回の措置についてこう評する。
ニューヨーク原油先物相場は、指標の米国産標準油種(WTI)が今年2月にコロナ禍前の水準を回復した。協調減産の効果もあったが、石油連盟の杉森務会長が2月の記者会見で「将来への期待感に支えられている部分も大きい」と指摘したように、米追加経済対策の実現や新型コロナウイルスワクチンの普及に伴う景気回復を先取りした側面があり、必ずしも盤石なものではない。各国の金融緩和策による「緩和マネー」の流入にも助けられた。
4日のWTIは今回の主要産油国の決定を受けて、一時1バレル=64・86ドルまで上昇した。上野氏は「当面は上向きだろう。65ドルを超えて一時的に70ドルに接近する可能性もある」とみる。
原油価格が上昇すると、石油元売り会社がガソリンなど石油製品の卸価格を引き上げ、時間差を伴って小売価格にも転嫁される。
今月1日時点のレギュラーガソリン1リットル当たりの全国平均小売価格は144円60銭と、昨年3月9日以来約1年ぶりの高値水準だ。価格上昇圧力がさらに高まれば、家計や物流業者などの負担が増しかねない。(森田晶宏)