海外情勢

「ワクチン接種証明」めぐり議論活発 欧米で導入模索 (1/2ページ)

 新型コロナウイルスのワクチン接種者にデジタル証明書を発行し、自由な移動を認めるべきか否かが、各国で論議されている。「ワクチンパスポート」と呼ばれる証明で、欧州では経済正常化への切り札としてデンマークなどが導入方針を決めた。米国も検討に乗り出した。ただ、非保有者への差別につながるとの懸念も強く、対応は分かれる。(パリ 三井美奈、カイロ 佐藤貴生、ワシントン 住井亨介)

 ジョンソン英首相は15日、アフリカで入国時、黄熱病ワクチンの接種証明を求めている国があることに触れ、新型コロナでも「接種証明を求める国が出てくるだろう」と述べた。

 ワクチン接種が速いペースで進む英国では、ブレア元首相が1月末、先進7カ国(G7)議長国として国際的な証明書の基準作りをリードするよう提案。政府は当面、海外渡航で必要な場合に限って証明書発行を検討すると表明した。

 欧州ではアイスランドがすでにデジタル接種証明の運用を始め、欧州連合(EU)加盟国ではデンマークに続き、スウェーデンも今夏までの運用を目指す。海外渡航だけでなく、スポーツや文化など集客イベントでの使用を視野に入れる。

 観光に経済を依存する南欧諸国でもデジタル証明利用の動きが出てきた。

 ギリシャはイスラエルの接種証明書の保有者に対し、隔離なしで入国を認める方針を決めた。世界最速でワクチン接種が進むイスラエルは、接種を受けた人にホテルやスポーツジムなどの利用を許可する「グリーンパス」の運用を国内で21日にも始める方針だ。

 ギリシャのミツォタキス首相は「みんな疲れ切っている。旅行したい人は大勢いる」と述べ、他国とも同様の措置を広げたい考え。

 EUでは1月、ギリシャが域内の自由移動復活のため、EU共通の接種証明の発行を提案し、スペインやポルトガルも前向きな姿勢を示した。だが、「ワクチン接種が十分に広がっていない中、差別を生む制度にしてはならない」(ベルギーのウィルメス外相)との慎重論も強く、当面、医療目的限定の共通証明書の発行を目指すことになった。

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