海外情勢

米国「ワクチンツアー」に批判 英・印でも海外接種企画 (1/2ページ)

 【ニューヨーク=上塚真由、ロンドン=板東和正、シンガポール=森浩】新型コロナウイルスのワクチン接種を受けるため、居住地でない地域を訪れる「ワクチン・ツーリズム(ワクチン観光)」が米国各地で問題化している。ワクチン不足が指摘される中、ツアー代を負担できる富裕層が先に接種すれば、代わりに「犠牲になる人が出てくる」(米専門家)と批判されているのだ。英国やインドでも海外で接種を受けるツアーが企画されている。

 米国では、優先的に接種を受けられる年齢や職業などの条件が州ごとに異なる。ソーシャルメディア上では、どの州ならワクチン接種ができるか情報交換が頻繁に行われている。

 目的地として人気になったのは、南部フロリダ州だ。デサンティス州知事が昨年12月、65歳以上であることだけを条件に接種を認めたため、米国内だけでなく、カナダやメキシコ、ブラジルなどの富裕層が続々と同州を訪問。テレビ司会者や著名な経営者らが同州で接種を受けた様子が報じられると、「金持ちが優先的に受けるのは不公平だ」と批判が上がった。

 こうした事態を受け、フロリダ州は今年1月23日、接種条件を州内居住者に限ると方針転換。ただ、同州に別荘などを所有する人は引き続き接種が認められ、今月13日時点で接種者235万人超のうち約3%の6万7405人が「州外居住者」となっている。

 米国では、州の人口に応じてワクチン供給量が決められるため、他州から富裕層が押し寄せれば、本来優先されるべき医療従事者らに行き渡らないなどの懸念が噴出している。

 各州の対応はさまざまで、南部ジョージア州も65歳以上であれば、居住地は確認しない。身分確認を厳格にすると「ワクチン接種がさらに遅れることになる」として対策に踏み切れない州も少なくない。

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