海外情勢

WHOを検証する独立委、中国のコロナ初動対応批判 WHO自体についても疑問視

 【ロンドン=板東和正】世界保健機関(WHO、本部・ジュネーブ)の新型コロナウイルス対応を検証する独立委員会は18日、中間報告を公表し、感染拡大初期にあたる昨年1月の中国当局の対応について、十分ではなかったと批判した。WHOについても、医療機関の検査態勢整備などを促す「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」の宣言を同月30日まで先送りした対応を疑問視した。

 報告書では、中国の対応について「地方や国の保健当局が(昨年)1月に公衆衛生対策をより強力に実施できたはずであることは明白だ」と指摘した。中国当局の対応の遅れについては具体的に触れなかった。

 中国当局は2019年12月31日、湖北省武漢市で27人が原因不明のウイルス性肺炎にかかったと公表。20年1月20日に「人・人感染」を認め、同23日から武漢市を都市封鎖する措置を取った。しかし、すでにウイルスは世界に拡散し、中国は初動対応を誤ったと米国などに非難されてきた。

 また、中間報告は、WHOが緊急事態宣言を検討する緊急委員会を昨年1月22日に招集し、約1週間後の同月30日に再び緊急委を開催して宣言を出した対応を疑問視した。「緊急委が22日まで招集されなかったことや、緊急委が(同日に)緊急事態宣言の実施に合意できなかった理由が明らかになっていない」とした。 WHOのテドロス事務局長が22日の緊急委で緊急事態宣言を避けたい中国の思惑を忖度し、宣言を見送ったとの見方がある。

 報告書はWHOの機能不足にも言及。WHOは感染症が発生した際の調査や支援などを自由に行うことができず、「期待された任務を果たすには権限が不足している」と分析した。各国が緊急事態宣言後、即座に大規模な感染防止策を取らなかったとの認識も示した。

 独立委は昨年5月に開催されたWHO総会での決議に基づき7月に設置された。WHOや中国の新型コロナ対応について客観的な検証を行うのが主な業務で、ニュージーランドのクラーク元首相と、ノーベル平和賞受賞者でリベリアのサーリーフ前大統領が共同委員長を務めている。

 中間報告は18日に開幕したWHO執行理事会で19日に提出され、5月の総会に最終報告が提出される。

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