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カーボンプライシング、経済界に賛否 経団連会長「拒否せず」に波紋

 2050年までの温室効果ガス排出量実質ゼロに向けた政府の実行計画で、温室効果ガス排出量に応じて経済的負担を課す「カーボンプライシング(CP)」導入をめぐり、経済界で賛否が割れている。日本の産業界、金融界は導入反対が共通見解だったが、経団連の中西宏明会長が、導入検討に一定の理解を示したことが波紋を生むことに。CPは脱炭素政策推進の大きなカギになるとされるだけに、今後、激しい議論に発展する可能性がある。

 「拒否するところから出発すべきではない」。経団連の中西会長は昨年12月の会見で、政府によるCP導入検討に理解を示した。

 CPをめぐっては、菅義偉首相が同月、梶山弘志経済産業相と小泉進次郎環境相に導入検討を指示。梶山氏は「しっかり対応する」と表明し、小泉氏も環境省が制度化を議論してきたことを念頭に、「政府としての動きで、歴史的な一歩」と発言した。この流れを受けた中西発言は、脱炭素の推進による需要創出に期待を込めたものだ。

 だが経済界全体では「経営への負担が大きい」としてCPに反対の意見も根強い。経済界の各所から“火消し”の発言が相次いだ。

 日本商工会議所の三村明夫会頭は「企業はすでに国際的にみても割高なエネルギーコストを負担し、高止まりする電力料金が経営に影響を及ぼす」として明確に反対の立場を表明。経済同友会の桜田謙悟代表幹事も「CPを社会が受容するかには、大きなハードルがある」と語り、制度化は難しいとの考えを示す。

 身内である経団連の関係者からも「(中西発言は)あくまでも議論や検討すべきだということで、CP自体を容認する意味合いではない」との意見が上がる。経団連が昨年12月上旬に公表した提言でも、CPについては言及が避けられており、一枚岩になっていない実情も浮かぶ。

 菅首相がCP推進の姿勢を強く示していることから、炭素税や排出量取引など、CP導入に向けた動きは今年前半に一気に進む可能性が高い。経済界からは「CPで企業の負担が増えれば、環境面での企業のイノベーション促進を妨げる」(大手金融)「炭素税導入となれば税制改正が避けられず、慎重な議論が欠かせない」(財界首脳)などの声が噴出しており、CP導入に向けた議論の加速が、今後も大きな火種としてくすぶりそうだ。

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