政府が緊急事態宣言の再発令に向けて検討に入り、持ち直しかけた国内景気が「二番底」に落ち込む可能性が強まった。対象の首都圏1都3県は経済規模で国内の3分の1を占め、仮に宣言が1カ月間続けば、営業活動や外出の自粛で最大3.3兆円分の個人消費が失われるとの試算もある。
第一生命経済研究所の永浜利広首席エコノミストの試算では、宣言再発令により1都3県で“不要不急”の消費が1カ月間ストップすると想定して算出した。国内総生産(GDP)ベースでは輸入の減少による統計上の押し上げ効果が差し引かれるため、2.8兆円の損失が出るとみている。
近年のGDPと雇用環境の相関関係を分析すると、この損失に伴い14万7000人の失業者が発生する恐れがあるという。完全失業率は11月に2.9%と5カ月ぶり改善していたが、0.2ポイント程度悪化する計算だ。
対象が全国に広がった前回の緊急事態宣言では、外出自粛で小売りや飲食、観光、交通など人の移動で需要が生じる産業に打撃が広がった。今回は地域や業種が限定される見込みで、成長率が戦後最悪を記録した昨年4~6月期(前期比年率29.2%減)のような景気崩落は避けられそうだ。
ただ、三菱UFJリサーチ&コンサルティングの小林真一郎主席研究員は、再発令で景気回復に向けた期待感が剥落すれば、企業の倒産や事業縮小、希望退職が増加しかねないと指摘。「1~3月期は2桁のマイナス成長になってもおかしくない」と分析する。(田辺裕晶)