【カイロ=佐藤貴生】2015年のイラン核合意の当事国は21日、オンラインで閣僚級会合を開き、合意維持が重要だという認識で一致した。米次期大統領就任を確実にしたバイデン前副大統領はトランプ政権が離脱した核合意に復帰する意向だが、イランでは反米の保守強硬派が勢いを増しており曲折も予想される。
会合にはイランのほか英仏独中露の外相らが参加。終了後の共同声明は米の合意離脱に「深い懸念」を表明し、政権交代を見込んで米の復帰に期待を示した。
イランでは今月初め、核開発を拡大する法律が成立した。英仏独がトランプ米政権の科した制裁を回避してイランとの石油・金融関連の取引を履行しなければ、国際原子力機関(IAEA)の査察を拒否し、ウラン濃縮度を現状の約4・5%から20%にするとの内容だ。
合意でイランに課された濃縮の上限は3・67%で、保有する低濃縮ウランは規定の12倍に上る。ウランは濃縮度20%になると核兵器転用が可能な90%まで引き上げる作業が容易になるとされる。
法制定には核合意を主導したロウハニ大統領が反対したが、保守強硬派が7割を占める国会で可決された。制定直前の11月下旬には、イランで「核開発の父」と称される核科学者が暗殺され、国内で強硬論が強まっている。
イランで国政全般に最終決定権を持つ最高指導者ハメネイ師は今月中旬、「米国の敵意はトランプ大統領に始まったものではない」と強調し、米の政権交代で事態が好転するとの見通しを排除する姿勢を示した。
バイデン氏はイランが核合意の規定を順守すれば合意に復帰する方針だが、イランは米国の合意離脱で被った損害の弁済を求めており、双方の主張には食い違いもある。米の政権交代で早期に事態が打開されるかは見通せない情勢だ。