政府の成長戦略会議の有識者委員を務める東洋大教授の竹中平蔵元経済財政担当相が4日、産経新聞のインタビューに応じ、政府の「国際金融都市構想」実現について、「日本の所得税率は高く(人材が日本に来る)インセンティブ(動機付け)が働かない」として、所得税の減税を検討すべきとの考えを示した。与党が月内にまとめる令和3年度税制改正大綱には盛り込まれない方向だが、竹中氏は成長戦略会議で議論を続ける必要があるとの考えを示した。
同構想は、国際的な金融業の拠点を日本に作るというもので、菅義偉(すが・よしひで)首相は候補として東京、大阪、福岡を競わせる意向を示している。
竹中氏は、香港の国際金融都市としての地位が人権問題で揺らいでおり、日本の都市が代わりとなるのは「今回が最後のチャンス」と指摘。所得の高い金融分野の優秀な人材を海外から招くのに「一番重要なのは税制」と述べ、事業所得と見なされるなどすれば高い税率となる所得税の減税を議論すべきだとした。
もっとも、所得税率そのものの引き下げは反発が予想されるため、与党は3年度改正には盛り込まず、ファンドの運用成果を反映した報酬に低税率の「金融所得課税」を適用しやすくする方向。だが竹中氏は成長戦略会議で、所得税減税の議論を続けたいとした。
このほか、大阪や福岡が東京と肩を並べる国際金融都市となるのは「当然難しいと思う。どの分野でエッジを立たせる(先鋭的にする)かが問われる」とし、東京と異なるデリバティブ(金融派生商品)などの特長をアピールすべきだとした。証券取引所などを仲介せずに株式売買する私設取引所の設立などを例に、「どの機能で強みを出すかが重要」とした。