新型コロナウイルス対策のために制限していた日中間のビジネス目的での往来が30日、再開された。経済界からは歓迎する声の一方、観光目的の往来が途絶えたままの現状に悲観的な見方も。感染拡大防止の観点から制限を継続する大手企業もあり、手探りでの再始動となった。
「段階的でも、国際的な人の行き来が緩和する方向に向かっているのは、経済に携わるものとしては大変ありがたい」。関西経済同友会の深野弘行代表幹事は、今回の往来再開が経済回復に向けた第一歩になるとの認識を示した。
10月にシンガポールなどへの往来を一部解除している住友商事は、日中間のビジネス往来の再開を受け、近く中国への出張の一部解除措置をとるという。大手商社幹部は「リモート対応だけではビジネスの進展度合い、スピードなどに影響があった」と意義を語る。
一方で、往来再開の対象がビジネス目的に限られる中、経済効果は限定的との見方もある。
近鉄百貨店は訪日外国人旅行者に人気だったあべのハルカス近鉄本店(大阪市阿倍野区)で免税カウンターを維持するが、「今回の往来再開がすぐにインバウンドの売り上げ回復につながるとは思えない」(広報担当者)と、中国の電子商取引(EC)サイトでの販売促進などに注力する。大手私鉄関係者も「これですぐに、わが社のホテルに宿泊客が戻るわけではない」と効果を疑問視する。
世界的な新型コロナの感染再拡大が続く中で、往来再開には慎重姿勢をとる企業も少なくない。日産自動車やホンダは中国を含む海外出張を原則禁止する方針を継続。三井物産も「日本での感染拡大が収束しない現状では、当面は引き続き出張の是非を慎重に判断する」とする。
住友化学の岩田圭一社長は「制約なく行き来できればいいが、帰国後に公共交通機関を使えないなどの強い縛りがある。出張できないことで商談を取りこぼしたことなどは今のところなく、どうしてもというものに限り認めることになるだろう」と、個別案件での見極めが必要との考えを示した。