海外情勢

手作り天然皿、引っ張りだこ タイ北部のレストランが開発

 タイ北部チェンマイ県にあるタイ料理レストランが、新型コロナウイルス禍の逆風を乗り越えようと、地元で植生する木の葉などを利用して天然の食器(葉皿)を開発した。「自然環境に優しい」「おしゃれで自然を満喫できる」などと口コミで評判となり、引っ張りだことなっている。地元県知事の耳にも入り、このほど県当局にもサンプルを届け出た。将来的に販売や輸出も念頭に増産していくほか、県では特産品として育てていきたい意向だ。

 地元の木の葉使用

 このレストランはチェンマイ市街から北に約25キロ、メーリム郡内を流れるチャオプラヤー川の支流ピン川沿いにある「ナイスワン」。チェンマイ市内で16年続く日本語情報誌「ちゃ~お」の編集発行人を務める高橋敏さん(65)のタイ人妻、ジャーさんが今年6月にオープンしたオープンテラスの自然派レストランだ。同じ敷地内にある工房で、ジャーさんほかスタッフが天然皿を一枚一枚、丁寧に手作りで仕上げている。

 もともとあったレストランの出店計画中にコロナ禍となり、工事や開店もすっかり遅れた。加えて内外からの観光客はほとんど見込めなくなり困り果てていたところ、地元にあるメージョー大学農業生産学部の取り組みにヒントを得て始まったのが、地元に生える木の葉などを活用した食器作りだった。開発には同大のスミット博士が全面協力してくれた。

 葉皿の基礎となるのが、タイならどこの丘陵地帯でも植生している常緑樹「トントゥン」の葉だ。ハスの葉ほどもある大きな葉で、昔から屋根をふく素材として使われてきた。近年は工業系素材が中心となったため使用されることは少なくなったが、北タイ地方では今でも伝統家屋の建材として活躍している。

 廃材で彩り引き立て

 トントゥンの葉を皿に活用する技法も、昔からこの地方には存在したという。ただ、強度や見た目の点から商品化に結び付くことはなく、家庭内で用いられているに過ぎなかった。

 そこで、ジャーさんらが真っ先に取り組んだのが、商品化にもつながる強度のアップだった。葉と葉の間に食品にも安全な段ボール紙を挟み込み、モチ米由来の糊を使って貼り合わせ、それをプレス機で熱を加えながら加圧。すると、一般に市販されている紙皿を遙かに超える強度と耐久性を持つ葉皿ができあがった。皿は乾燥の具合や天然の色素によって、茶色から緑色まで色彩や紋様もさまざま。同じものが2つとない点も魅力を引き立てた。皿の縁や表面をクリーム色や紫色のトウモロコシの皮などで飾ってみると、よりおしゃれになった。水辺に生える「ヤーフェーク」という草も原料になった。このほか、竹、イチョウ、チークなども葉皿に彩りを与えてくれた。以前ならば焼却の対象で煙害の原因ともなっていたトウモロコシの皮などの廃材が、ここでは特産の工芸品に姿を変えた。

 評判が口コミで広がるようになると、10月上旬にバンコクで開催された「サステナビリティー・エキスポ(持続可能性の展示会)」への出展話が舞い込んできた。資金も在庫も十二分にはなかったが、スミット博士の後押しや話を聞いた篤志家らの援助でどうにかお披露目だけは間に合った。思い付きで展示したというトウモロコシの皮による手作りマスクも人気を集めた。

 チェンマイにある店は今、ジャーさんが切り盛りしながら、大学2年生の娘、まゆりさんが手伝っている。「子供たちのためにもこの自然を守りたい」というジャーさん。店内はたくさんの花や緑、天然素材の調度品などで包まれている。葉皿については増産を行い、一般への市販やゆくゆくは海外向けの輸出にもチャレンジしたい意向だ。地元チェンマイ県も観光資源として注目しているという。(在バンコクジャーナリスト・小堀晋一)

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