【シンガポール=森浩、北京=三塚聖平】日本や米国、中国など21の国・地域が参加するアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議が20日夜、テレビ会議方式で開催され、3年ぶりとなる首脳宣言を採択した。中国国営新華社通信によると、習近平国家主席は首脳会議での演説で、環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)について「積極的に参加を検討する」と表明した。
習氏が公式にTPPへの参加意欲を示したのは初めて。米大統領選で勝利を確実にしたバイデン前副大統領がTPPへの態度を明確にする前に先手を打ち、自由貿易を擁護する姿勢をアピールした。
トランプ米政権がTPPを離脱するなど「自国第一」の路線を邁進(まいしん)し、世界では新型コロナウイルス禍による経済低迷で保護主義的な動きが広がる。
首脳宣言では、新型コロナウイルス禍への対応として「経済回復と雇用創出を促す刺激策を強化する必要がある」などと指摘。ワクチン開発での協力の必要性も再確認した。
菅義偉首相は演説で「国際的なルールの下での貿易、投資の自由と連結性の強化が『自由で開かれたインド太平洋』を支える」と述べ、自由貿易の推進と、インフラなどで域内各国を結ぶ連結性の強化が重要だと強調した。その上で、11カ国によるTPPの拡大を目指す姿勢を示した。
首脳会議にはトランプ米大統領も出席。トランプ氏は大統領選での敗北が確実になって以降、初の国際会議への参加となった。
APEC首脳会議は2018年、米中対立を背景に首脳宣言を採択できなかった。19年は議長国チリの政情不安で会議が開催されず、マレーシアを議長国とする今回は首脳宣言を採択できるかが焦点だった。