菅義偉(すが・よしひで)内閣で初めてとなる行政事業レビューの「秋のレビュー」は、内閣の目玉人事として起用された河野太郎行政改革担当相が取り仕切る。行革に熱心に取り組む河野氏は、首相への意欲を隠さない。行革・規制改革は菅内閣の重要課題であるだけに、「河野行革」は次世代の首相候補への試金石ともなる。
「事業レビューは全て聖域なく、例外なく見る」
河野氏は10月13日の記者会見で、こう強調した。秋のレビューの対象には、9月まで防衛相として担当した防衛省の「次期戦闘機の調達」もリストアップした。自身の「古巣」にも切り込む姿勢を示すことで「聖域なき改革」を印象付ける狙いが透けてみえる。
首相肝いりの政策も対象にする。温室効果ガスの2050年までの実質ゼロや農林水産品の輸出促進など、成否が政権の評価に直結するテーマに関連する事業も取り上げる。菅政権が重点課題に掲げる政策でも極力無駄を排して効率を高めるとともに、公開の場で検証することで周知を図る狙いもあるとみられる。
河野氏にとって行革は、初当選以来取り組むテーマだ。平成20年には自民党の「無駄撲滅プロジェクトチーム」を率いた。「アニメの殿堂」と呼ばれた国立メディア芸術総合センターの予算凍結などを求めたが、当時の麻生太郎内閣では21年度補正予算に盛り込まれた苦い経験がある。
その後に誕生した民主党政権では行政刷新会議のレビュー「事業仕分け」がメディアに注目され、河野氏は野党議員だったにもかかわらず視察に訪れた。視察当日の21年11月27日の自身のブログでは「僕らがやったときは反乱軍だったが、今度は正規軍のように扱われた。うらやましい」と本音を漏らしている。
河野氏の行革担当相就任は2回目。規制改革担当相も兼任しており、就任当初は「今回は国民の側から見て新しい価値をつくり出す規制改革を中心に据える」と述べていたが、首相への意欲を見せる河野氏にとって、行革でも目立った成果を挙げることは必要だ。
河野氏自身もその点は意識しているようで、行政事業レビューには厳しく臨む姿勢を示している。先月30日の記者会見で、レビュー用の資料に誤記が多いと指摘されると、「あまりにひどい場合には人事評価に反映をするとか、考えていかなければいけない」と語気を強めた。(大島悠亮)