グルメサイトの送客手数料「致し方ない」
ポイント付与事業の対象は、農林水産省から委託を受けた事業者が運営するグルメサイトで飲食店を予約・来店した人に限られる。居酒屋チェーン大手の「鳥貴族」では、327円(税込み)の1品のみを注文し1000円分のポイントを受け取る事例が複数店舗で発生するなど、少額決済によって差額分のポイントを稼ぐ事例が発覚し、外食チェーンが予約条件の変更などに追われた。だが、制度の不備はそれだけではないようだ。
「送客手数料を取られることは確かに痛いですが、そうしなければ新規のお客さまは来てくれません。致し方ないです」と話すのは、鉄板焼きやお好み焼きとワインが楽しめる高級店「Vin樹亭(ヴァンジューテイ)」(大阪市北区)のオーナーソムリエ、二宮久さん(56)。飲食店はグルメサイト側に「送客手数料」を支払わなければならないケースが多いという。
送客手数料は昼(ランチ)で1人50~100円、夜(ディナー)は200円程度。Vin樹亭は客単価1万3000~1万4000円の高級店で、コロナ禍までは多くの常連、リピーターに支えられ、もともと大手のグルメサイトに登録はしていなかった。しかし、感染拡大とともに来店客は激減。緊急事態宣言が行われた4月、5月は前年比97%減と大きく落ち込んだ。二宮さんは来店客増加の呼び水にしようと、グルメサイトの力を借りることに。「送客手数料はかかりますが、(グルメサイトは)集客ツールの一つ。新規のお客さまが来てくれます。考え方だと思います」と割り切っているという。
テーブルチェックによると、グルメサイト別の1店舗当たりの予約件数(26日時点)は「ホットペッパー グルメ」が前月比で289.5%と3倍近くも増加。「ぐるなび」は同264.7%、「一休.comレストラン」252.7%、「食べログ」207.6%と軒並み伸びた。
一方、客単価の低い飲食店では、グルメサイト側への送客手数料の負担が重くのしかかるケースも。例えば1000円のランチでは、売り上げの1割に当たる100円が送客手数料となることもある。
テーブルチェックの谷口優社長は「ポイント付与事業の利用者がキャンペーン開始から半月で1000万人を超えるなど、コロナにより大きく落ち込んだ客足を回復させる一助にはなっていると考えています」と指摘する。しかし、キャンペーンで本来支援すべき飲食店に、費用面や管理面での過剰な負担が発生しているとして、「制度の早急な見直しが必要です。このままグルメサイト経由の予約を促進することは、多くの飲食店が課題ととらえる『グルメサイト依存』をさらに深刻化させることにもつながりかねません」と懸念する。
ワンダーテーブルの竹原マネジャーは「予約がキャンセルされると、飲食店のスタッフらがグルメサイトの管理画面でキャンセル処理をするのですが、店舗が忙しくキャンセル処理を怠ってしまうと、送客手数料だけが引かれるということになってしまう」と飲食店が抱える苦悩を代弁すると、こう続けた。
「業界全体が落ち込んでいた状況ですのでキャンペーンそのものはありがたいのですが、グルメサイトの利用が前提というのはどうなのかなと。潤っているのはグルメサイトだけです」