主張

食品ロス削減月間 コロナ禍機に意識持続を

 10月は、食べられるのに捨てられてしまう食品を減らすための食品ロス削減月間だ。

 平成29年度の食品ロスは612万トンに上る。日本人1人当たり毎日茶碗(ちゃわん)1杯分のご飯を捨てている計算となる。

 この事実を「もったいない」と感じられるかどうかが大切だ。

 食材を生かし切るという日本人が大事にしてきた食文化を国民全体でどう共有していくのか。削減月間を食品の無駄を少しでも減らしていく機会としたい。

 食品ロス削減月間は、昨年10月に食品ロス削減推進法が施行されたのに伴い設定された。国連が食料問題を考える日として、1981年、10月16日を世界食料デーに制定したのがきっかけだ。

 今年のノーベル平和賞に世界各地で食料支援を行う国連機関「世界食糧計画(WFP)」が選ばれた。世界がコロナ禍に見舞われる中、飢餓の撲滅に向けた努力が評価されたものだ。世界規模の食品ロス削減の弾みとしたい。

 世界では全人口の9人に1人に当たる8億人以上が飢えに苦しむ一方、肥満は6億人に上る。「食の偏り」をいかになくしていくのか、国際社会が問われている。

 国内における最近の特徴は、コロナ禍で自宅で過ごす時間の長くなった消費者の食生活が変化し食品ロスが減っていることだ。

 ハウス食品グループ本社が今年6~7月に行った食品ロスに関するアンケート結果がある。食品ロスが「全くない」と回答した人は前年に比べて約10ポイント増え、17%になった。同社は、コロナ禍による巣ごもりで調理機会が増えたのと官民による啓発活動が浸透し、食品ロスを減らそうという意識の高まりが背景にあるとみる。この機運を定着させていきたい。

 忘れてならないのは、生産者側を悩ませている問題だ。岡山県笠岡市の農業生産法人「エーアンドエス」(大平貴之代表)は、コロナ禍で業務用の出荷先を失い大量に余ったタマネギを廃棄した。

 市場に出せば、価格が暴落し地域の農家に迷惑をかける。こども食堂や福祉施設にも寄付してきたが、大量の寄付は出荷する以上の時間と労力が必要という。生産者の努力だけで食品ロスを減らすのは限界がある。

 生産現場における食品ロスを減らすためには、国や自治体によるきめ細かい支援が不可欠だ。

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