政府が大阪を中心とする関西圏と福岡県を候補地に挙げ、外資金融機関の誘致強化に乗り出す方針を固めたことが19日までに分かった。政府はこれまで、東京での国際金融センターづくりを目指していたが、相次ぐ災害発生のリスクや新型コロナウイルス収束後の地域分散型社会を見据え、戦略を転換する。9月末に締め切る2021年度予算の概算要求に関連事業を盛り込む。
アジアの金融では香港の存在感が大きかったが、香港国家安全維持法の成立で人材や資本流出の可能性が高まっている。日本政府の誘致強化は、企業や優秀な人材の受け皿となる狙いもある。
日本への移転や事業展開を検討する海外企業から相談を受け付ける窓口「コンシェルジュ(仮)」を大阪と福岡に設置するための費用5000万円を金融庁が21年度予算で要求する。大阪にはデリバティブ(金融派生商品)と商品先物を一元的に取引する大阪取引所があり、福岡はアジアから地理的に近く、地域限定で規制を緩和できる国家戦略特区の制度も活用できる利点を考慮した。
内閣官房や金融庁、法務省、外務省といった関係省庁が7月以降に複数回、協議を開き、東京と同様の金融拠点を国内2カ所に呼び込む方針を確認した。年末の予算編成や税制改正を控え、官邸で開く未来投資会議でも議論する予定だ。
海外金融機関の誘致や金融プロフェッショナル人材の獲得に向けては、香港やシンガポールといったアジアの他の金融都市と比べて高い企業や個人の税率引き下げが検討課題となっている。短期間で事業を立ち上げられるように査証免除措置の導入も検討する。
海外金融機関が円滑に拠点を開設して事業を始められるように事務所探しを支援する他、行政手続きの簡素化や英語対応の強化に取り組む。他の主要国と異なり、日本では外国籍と日本国籍の両方を持つことができない「二重国籍問題」への対応も議論する。
【用語解説】国際金融センター
世界的に事業を展開する銀行や証券会社、保険会社、投資ファンドなどが拠点を構え、株式や外国為替の取引の中心となる都市。代表格は歴史的に有力金融機関が本拠地を構えるニューヨークとロンドン。アジアでは東京のほか、香港やシンガポールも存在感が大きい。法律事務所や監査法人など、幅広い関連業種も呼び込めるため、各国が誘致を競い合っている。