政府は4日、いわゆる徴用工訴訟で韓国最高裁から賠償を命じられた日本企業の資産売却に向けた手続きが進んだことを受け、売却は断固容認しないとの立場から、韓国への反発を強めた。裁判所の売却命令によって資産が現金化された場合に関し、菅義偉官房長官は記者会見で「深刻な状況を招く」と述べ、対韓制裁に踏み切る可能性を示唆した。
被告の日本製鉄の韓国内資産の差し押さえ命令決定に関する「公示送達」の効力が4日に発生したことを踏まえた対応。日本政府には報復措置をちらつかせることで、韓国側に資産売却を思いとどまらせる狙いがある。制裁を発動すれば韓国政府が直ちに対抗措置を講じるとの観測も出ている。日韓関係は冷え込む公算が大きい。
会見で菅氏は、対韓制裁発動の可能性を念頭に「現金化に至れば、深刻な状況を招くので避けなければならない」と強調。被告企業に実害を及ぼさない形での徴用工訴訟問題の解決策を、韓国が自らの責任で速やかに示すべきだとの認識を示した。「あらゆる選択肢を視野に入れて、引き続き毅然(きぜん)と対応する」とも指摘した。
茂木敏充外相は、日本製鉄に賠償を命じた2018年10月の韓国最高裁判決を、「明確な国際法違反だ」と批判。資産を現金化された場合の措置に関し「関係企業と緊密に連絡を取りつつ、あらゆる選択肢を視野に入れて毅然と対応したい」と述べた。
資産売却問題で自民党有志の新グループ「保守団結の会」(代表世話人・高鳥修一筆頭副幹事長)は4日、現金化された際には対韓制裁を直ちに実施すべきだとする決議文を官邸に提出した。