3カ月間におよぶ耐乏生活を強いられた国民からは、一部の特権階級だけが感染防止に必要な措置を免れたと強い非難が起こった。プラユット首相は謝罪に追い込まれ、政府は2人の濃厚接触者ら7000人以上を対象に緊急のPCR検査を実施。全員が陰性だったとの発表を余儀なくされた。
同時に、国民の間では外国人の入国を今は認めるべきではないとする世論が形成されることになった。国立大学が実施した国民の意識調査で、「今は外国人の入国を認めるべきではない」と答えた人は95%近くにも達した。同様の調査を実施した6月上旬に比べて40ポイントも急上昇した。
こうした中、タイ政府は非常事態宣言をさらに1カ月延長する一方、外国人の入国についてのガイドラインをまとめ、既に実施に移している。それによると、タイ人とその家族以外に入国が認められるのは、労働許可証の保有者とその家族、タイの教育機関に通う学生とその家族にほぼ限られ、新たに医療観光者や展示会の主催者などが加えられる見通しだ。
ただし、全ての入国者を対象にPCR検査と2週間の強制隔離、さらには新型コロナに対応した10万ドル(約1059万円)以上の保険の加入が義務付けられ、ハードルは高い。航空便も正常化には遠く、日本発の場合は在京タイ大使館が割り当てる航空機を利用しなければならない。
保健当局者の一人は「新型コロナ撲滅と正常化対策は1カ国ではできない。各国が協力して進めなければならないのに、国民間で温度差があるのは残念だ」と述べ、日本人の意識の向上を期待した。そのコメントを取材していた横ではテレビのニュースが、日本で始まった横文字の連休キャンペーンの模様を伝えていた。(在バンコクジャーナリスト・小堀晋一)