日本に多くの技能実習生を送り出しているベトナムの首都ハノイで、日本でパン作りを学んだ元実習生がベーカリーを相次いで開店した。両国関係緊密化に伴いハノイに住む日本人も増加。ベーカリーは口慣れた食パンや総菜パンを求める日本人在住者らに人気で、固定客をつかみつつある。
ハノイ市トーヒエウ地区のベーカリー「GOCHIPAN」。店内には日本風の食パンやあんパン、カレーパンなどが並ぶ。店主は30代のグエン・ズイ・ティエプさん。栃木県那須塩原市で約3年間の実習を終えた後、昨年8月に開業した。
ベトナムにはフランスによる植民地統治の影響で、ベトナム風サンドイッチ「バインミー」などパン食文化が根付いている。ティエプさんは「日本のパンは種類が豊富で、軟らかく食べやすい」と気に入り、訪日した。
日本の業界関係者によると、パン職人には「早朝から働き、勤務条件が厳しい」とのイメージがあり、近年は人手集めに苦労し技能実習を導入する企業も多いという。ティエプさんは「毎朝4時に起きてパンを作る。大変な仕事だが売れ行きは悪くない。できれば2店目も出したい」と話す。
日本料理店が並ぶリンラン地区には昨年10月「ルフィ」が開店した。店主は20代のズオン・ディン・ディウさん。山梨県韮崎市のベーカリーで約3年働いた。店名は、訪日前から好きだったという人気漫画「ONE PIECE(ワンピース)」のキャラクターから取った。
「日本への渡航は、当初はお金が目的だったが、パン作りを続けているうちに面白くなり、夢中になった」という。日本人のほかベトナム人の顧客も増えており「コロッケパンなど、味には自信がある。店を大きくしたい」と意気込む。(ハノイ 共同)