海外情勢

「極度の貧困」最大1億人に 世界でコロナ失業続出

 新型コロナウイルス感染症が景気後退を招き、世界中で貧困問題が深刻化している。国際通貨基金(IMF)や世界銀行は最大1億人が1日1.9ドル(約200円)以下の収入で暮らす「極度の貧困」に陥ると警告。豊かな先進国から開発途上国にもたらされるとされる「トリクルダウン(滴り落ちる富)」は枯渇しかねない危機的状況だ。

 約3000万人もの最貧困層を抱えているとされる北アフリカのエジプトでは、主要な外貨獲得源の観光と出稼ぎが打撃を受ける。地元メディアは年末までに貧困層が最大1250万人増える可能性があると警鐘を鳴らす。

 ピラミッドなど著名な観光地からは人影が消えた。「路上でせっけんを売っているが、1日に1ドル程度にしかならない」。カイロ近郊の土産物店で働いていた30代のユニス・ファクリさんは解雇され、月100ドルの給与はゼロになった。

 出稼ぎへの影響も深刻だ。建設事業の停止などで既に約5万7000人のエジプト人が帰国。40代のリファト・バドリさんは5月、クウェートからエジプト南部アシュート県の村に戻ったが「紹介されたごみ掃除の仕事は感染リスクを感じて拒否した」と無職のままだ。

 路上暮らしを十数年続けるフィリピン・マニラの30代、ネゲラさんは定職に就けず、幹線道路で信号待ちの運転手らに物乞いをしたり、海で釣りをしたりしてしのぐ。「気のいい運転手は水や果物をくれる。でも最近は何ももらえないし、車の往来自体少ない」

 フィリピンでは失業者が年内に1000万人に達するとの試算も。経済成長に急ブレーキがかかり、貧困層拡大が忍び寄る。

 国連食糧農業機関(FAO)は、中南米で新たに約1600万人が極度の貧困に陥ると見積もる。感染防止策の商業や外出などの規制で職を失う人たちが続出。非政府組織(NGO)「反飢餓行動」によると、ペルーでは首都から約16万5000人が地方へUターンを試みている。グアテマラでは米国から帰還する移民が増え、家族の収入源である出稼ぎ移民からの送金が少なくとも25%減少するとみられている。

 あえぎながら人々は命をつなぐ。世銀のエコノミストは「貧困層の多くは失業保険などの社会的セーフティーネットを持たない。働けなくなれば頼るべき資源がない」と苦境を語った。(カイロ、マニラ、サンパウロ、ワシントン 共同)

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