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コロナ拡大でオンライン学習普及

 新型コロナウイルス感染症は世界200カ国以上に広がりをみせ、国連教育科学文化機関(ユネスコ)によると、世界の学生人口のうち約90%に当たる15億人超の学習環境に影響を与えた。この状況下で広く取り入れられるようになったのが、オンライン学習である。

 調査会社リサーチ・アンド・マーケッツによると、世界のオンライン学習は9.2%の年平均成長率で伸び、市場規模は2019年の1879億ドル(約20兆2105億円)から25年には3192億ドルに増加することが見込まれる。

 ベトナムは、ケン・リサーチによると、年平均成長率20.2%(19~23年)で、23年の市場規模は30億ドルと予測されている。これはマレーシア(20億ドル)、フィリピン(27億ドル)よりも大きい。

 自国サービス拡大

 ベトナムでは今年1月下旬に、新型コロナ感染症例が初めて発覚。ベトナム政府が一時的に全学校を休校とする措置をとったため、各学校が対応策としてオンライン学習を実施するようになった。

 ビーン・サーベイのオンライン調査(4月実施、対象16歳以上)によると、約60%が新型コロナ感染拡大の影響でオンライン学習を初めて体験した。そのうち76.5%が「録画」、62.4%が「オンラインでの授業」。人気のコンテンツは「外国語」(67.1%)、「コンピュータースキル」(45.9%)などだった。

 学校で利用されているストリーミングプラットフォームで目立つのは、米ズーム・ビデオ・コミュニケーションズの「ズーム」、米マイクロソフトの「チームズ」、米グーグルの「ミート」だった。ベトナム企業では、いずれも通信大手のベトテルとVNPTがプラットフォームを提供している。

 全国約2万6000の学校に導入されている「ベトテル・スタディー」はコンテンツも2万9000点と多く、1カ月に4100万件のアクセスがある。「VNPT Eラーニング」の利用者は新型コロナ感染拡大前から4倍増の500万人となり、ピークでは1時間当たり10万人が利用している。ベトテルとVNPTは新型コロナ感染拡大中、サービスを無償で提供していた。

 通信環境改善が課題

 オンライン授業には課題も多くある。教師はウェブ・ツールを新たに用意しなければならず、学生は通信環境が悪く授業に出席できなかったケースもある。ビーン・サーベイの調査では、改善してほしい要素として「安定的な高速通信(71.1%)」が挙げられた。次点の「静かで快適な環境(54.9%)」については、多世代同居が多いベトナムならではのものといえる。

 学生の反応としては、大多数がオンライン学習の実用性を認めている。反対派は約9%で、「新型コロナ感染症による休校中は充足期間として、オンラインは補習授業に使われるべき」「自習や過去の授業の復習に使われるべき」などの意見があった。「授業の有効性」に対するオンラインとオフラインの比較では、67.6%が「オフラインでの授業の方が効果的」と回答している。

 ベトナムではしばらく国内新規感染者が出ていないことから、多くの制限が緩和され、学校も再開が進む。オンライン学習が定着していくのか、引き続き注視していきたい。

 B&Company株式会社:日系で初・唯一のベトナム市場調査専門企業。消費者や業界へのアンケート・インタビュー調査と参入戦略を得意分野としている。b-company.jp

 「ASEAN経済通信」https://www.asean-economy.com

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