海外情勢

北朝鮮、寄付流用などの疑惑で渦中の韓国の元慰安婦支援団体と前理事長を擁護

 【ソウル=名村隆寛】韓国の元慰安婦支援団体「日本軍性奴隷制問題解決のための正義記憶連帯」(正義連)と前理事長、尹美香(ユン・ミヒャン)議員(55)=左派系与党「共に民主党」所属=による寄付金流用などの疑惑について、北朝鮮メディアが正義連と尹氏を擁護、支持する主張を展開している。

 北朝鮮の祖国平和統一委員会のウェブサイト「わが民族同士」(5月31日)は「盗賊がムチを持つようなもの(泥棒の居直り)」と題した記事で、韓国の最大野党、未来統合党など保守勢力が「今回の疑惑を、反日勢力を攻撃する絶好の機会と見なしている」と指摘。「保守一味が進歩団体(正義連)を『日本を売り利益を得る反日勢力』と公然と罵倒し、真相究明をわめいていることこそ泥棒の居直りだ」と批判した。

 また「進歩勢力(韓国の左派勢力)を腐敗勢力だと決め付け政治的に葬り去ろうという陰険、凶悪な下心が潜んでいる」と断じた。

 さらに「進歩民主勢力に対する民心の不信と排斥の機運を鼓吹しようとする親日積弊勢力の卑劣な陰謀策動の産物だ」と強調した。

 北朝鮮の対南宣伝メディア「統一のメアリ(山びこ)」(1日)は、尹氏を「正義連元理事長で『共に民主党』所属の国会議員当選者」と肩書を付け紹介した。北朝鮮にとって尹氏は守るべき存在のようだ。

 ただ、北朝鮮メディアの過剰な擁護は、尹氏や正義連の「親北疑惑」を裏付ける性質がある。尹氏は慰安婦問題での北朝鮮との共闘を主張。また夫の金三石(キム・サムソク)氏は元活動家で、北朝鮮からの工作資金事件で懲役刑が確定後、再審で無罪となった。

 今回の疑惑の一つである元慰安婦のための保養施設の売買の仲介に当たったのが親北派の元活動家である国会議員、李圭閔(イ・ギュミン)氏だ。尹氏夫妻が脱北者を北朝鮮に戻るよう懐柔したとの報道もある。

 尹氏や正義連の前身である韓国挺身(ていしん)隊問題対策協議会はかつて、自分たちを「従北」と評した韓国の保守系ネットメディアを訴えたが、今年2月に韓国最高裁で敗訴が確定した。

 それよりも、北朝鮮メディアの「保守勢力による反日勢力への攻撃」「親日積弊勢力の卑劣な陰謀策」といった主張は、韓国の左派や与党の一部の批判と一致している。尹氏らを擁護する韓国の左派勢力と北朝鮮の考え方は同じといっても過言ではなく、両者の今後の動向が注目される。

 元慰安婦の李容洙(イ・ヨンス)さん(91)が5月に会見し、尹氏らを批判したことを機に、元慰安婦のための多額の募金や寄付金、国庫補助金の不正な流用や、保養施設の不明朗な売買の疑いが続出。尹氏の私的な流用疑惑もあり、市民団体が尹氏らを横領や背任などの罪で告発した。尹氏は寄付金などを個人口座で受け取ったことは認めたが、不正流用は否定している。

Recommend

Ranking

アクセスランキング

Biz Plus