経済産業省がキャッシュレス事業者の決済手数料の公表を決めたのは、手数料が店舗の大きな負担となっている実態があるからだ。海外に比べて高いとされてきた日本の決済手数料に“メス”を入れた格好だが、高額な手数料の背景には、高コストになりがちな日本のキャッシュレス決済の構造的問題もある。公表と合わせて課題解消に向けた取り組みも求められている。
「利益率の小さい中小店舗にとって、決済手数料は1%上がるだけでも大きな打撃だ」。ある関係者はそう語る。
決済手数料は売り上げの金額に対してかけられる。例えば手数料率が3%なら、1万円の売り上げで300円を決済事業者に支払うことになる。1つの決済でみれば少額だが、売り上げのほとんどがキャッシュレスになった場合、売り上げが3%減ったことと同じことになる。
キャッシュレスを導入することで、店にとっては新規顧客が増え、1人当たりの購入額が増加するほか、現金を管理する業務が減らせるなどの利点があるとされる。ただ、導入で増える売り上げよりも手数料コストが上回れば、キャッシュレスを続ける店は減少するとみられる。経産省が2017年に公表した調査でも、店舗がキャッシュレスを導入しない理由は「手数料の高さ」が最多だった。
日本の決済手数料が高いことについて、決済サービスコンサルティングの宮居雅宣社長は、「キャッシュレス事業者が高コスト体質になっている」と話す。典型がクレジットカード会社で、欧米では銀行がクレジットカードを発行するのに対し、日本は銀行とは別にカード会社が設立され、銀行に振り込み手数料などを払いながら事業を行っているのが一般的だ。
また、日本ではカード利用に伴うポイントが重視され、利用額の一定割合を利用者に還元。その結果、店舗が支払う決済手数料が高くなっているのだ。QRコード決済のペイペイなども手数料無料キャンペーンで対応店舗を急拡大させたが、コストが先行しており、「いつまでも無料は続けられない」との声は多い。
宮居氏は「手数料を下げる取り組みは重要だが、キャッシュレス導入効果の可視化や、IT技術の活用などによる高コスト体質解消の工夫も不可欠だ」と話している。(蕎麦谷里志、高橋寛次)