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感染リスク、家族が感染したら…障害者ら危機直面

 新型コロナウイルスが感染拡大する中、心身に障害がある人たちが危機に直面している。肢体不自由なために予防策が十分に取れなかったり、知的障害からマスクを着けることの意味を理解できなかったりと、障害を持たない人よりも感染リスクにさらされているケースが少なくない。さらに、身の回りの世話をする家族らが感染した場合にどうするのか、といった心配もある。「障害児を持つ家庭は毎日の生活で精いっぱい」と悲痛な声が漏れる。(江森梓)

 不安は尽きない

 「もしわが子が感染してしまったらと思うと、不安でしかたがない」。大阪府岸和田市の高田美穂さん(60)はため息をつく。

 次女の育子さん(30)は知的障害があり、心臓疾患もある。免疫力が低いため病気にかかりやすく、日頃から、うがいや手洗いをこまめにさせるなどして気を付けていた。

 そうした中、新型コロナウイルスの感染が拡大。マスクや消毒液、ハンドソープなどが品薄状態になり、高田さんが薬局に探しに出かけようと思っても、育子さんが通う作業所は感染拡大の影響で休業中で、家に一人置いていくわけにもいかない。

 高田さんはたまたま知人から譲ってもらえた。だが、それで安心とはならない。育子さんにマスクを着用させても、息苦しいから鼻を隠さない。手をアルコールで消毒させても、しょっちゅういろいろな場所を触っては手をなめるので目が離せない。

 仮に育子さんが感染した場合は、つきっきりで看病しないといけない。それだけでなく、治ってもその後に高田さんが感染したら、誰が育子さんの面倒を見るのか。不安はつきない。

 高田さんは「障害児を持つ家庭は毎日の生活で精いっぱいで、先を見通す力が一般の家庭より弱くなりがち。感染拡大が長引けば長引くほど、困る人は増えると思う」と漏らした。

 「保護者も疲弊」

 手話通訳派遣サービスなどを手掛ける企業「ミライロ」(大阪市)が障害者やその保護者を対象に3月上旬に行った「新型コロナの影響実態調査」では、多くの人が感染予防に対し不安を抱いていると回答。「手が不自由なためマスクが外れた際に自力で着用できない」「知的障害のためにウイルスが流行しているという概念が分からず、マスクの着用を拒否される」などの課題が多くあることが浮き彫りになった。

 こうした状況から、重度障害者の親らでつくる一般社団法人「全国肢体不自由児者父母の会連合会」は4月下旬、障害者へ適切な配慮を求める要望書を国に提出した。

 要望書は厚生労働省と文部科学省に対し、医療的ケアを必要とする障害者や難病患者のための消毒用アルコールやマスクなどの物資の確保▽在宅生活での介護への支援▽重症患者に対応できる人工呼吸器の増産と確保-などを求めている。

 感染拡大後は同会事務局にも「消毒用アルコールが手に入らないか」「支援学校の休校や通所施設の休業で在宅でつきっきりの介護は厳しい」といった声が多数寄せられたという。

 清水誠一会長は「障害のある人にとっては、命にかかわる問題。感染拡大の中で子供たちや保護者らは疲弊しており、国は早急に手だてを講じてほしい」と話している。

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