新型コロナウイルスの世界的な感染拡大に伴い、滞在先からの出国や帰国を希望する在外邦人が22日時点で1千人以上に上っている。各国の国境封鎖などで在外邦人の移動に制限がかかっているためで、外務省が全員の早期帰国に向けた支援を急いでいるが、輸送手段の確保と円滑な移動には、同時に複数の国の政府の協力が必要なケースが多く、日本の外交力が試されている。
世界保健機関(WHO)が新型コロナウイルスの「パンデミック(世界的大流行)」を宣言した3月11日以降、空港閉鎖や航空便の運航停止といった措置を講じる国が相次ぎ、帰国しようにも身動きがとれない在外邦人が多数生まれた。
外務省によると、出国・帰国を希望する邦人は今月3日の段階で約50カ国に計約4千人いた。茂木敏充外相は21日、引き続き約1100人が出国・帰国を希望していると明らかにした。
邦人の帰国は着実に進んでいるが、複数の国に国境や空港の封鎖の一時的な解除を認めてもらうための交渉や航空会社との調整は複雑で、アフリカでは邦人の移動手段確保とともに難度の高いオペレーションが求められた。
17~18日には、ケニアやガーナなどアフリカの15カ国に散らばって滞在していた邦人が、旅行代理店などが手配した航空機を利用し、10のルートでエチオピアの首都アディスアベバに集合。集まった約300人は18~19日にエチオピア航空を利用し、韓国・仁川(インチョン)経由▽ドイツ・フランクフルト~カタール・ドーハ経由▽英国・ロンドン経由-の3ルートでそれぞれ20日までに帰国した。
安倍晋三首相が21日にエチオピアのアビー首相と電話会談し、「エチオピア航空がアフリカ各国から邦人が帰国するための不可欠な航空便となっている」と支援に謝意を表明した背景にはこうした経緯があった。
外務省によると、月内にはさらに450人が帰国できる見通しで、国際空港が封鎖されているフィジーや、航空機の離着陸が禁止されている南アフリカなどで、邦人帰国の特別便の運航に向けた最終調整が進んでいる。