元滋賀県立大学教授・荒井利明
新型コロナウイルスの感染終息がいつになるか、まったく不透明だが、終息後、つまりコロナ後の世界において、中国は一段と大きな存在になるのだろうか。
2008年、リーマン・ショックが起き、世界は経済危機に陥った。国際通貨基金(IMF)によると、世界経済の成長率は07年までの数年間、つまりショック前の数年間は5.0%前後だったが、09年にはマイナス0.1%に落ち込み、いったんは回復したものの、12年以降18年までずっと3%台である。
先進国と新興国・途上国を比較すると、07年に2.7%だった先進国の成長率は09年にマイナス3.3%に下落し、10年に3.1%と上昇したものの、11年以降は1%台と2%台を行き来している。新興国・途上国は07年の8.4%から09年に2.8%まで下落したが、10年に7.4%に戻った後、18年の4.5%まで緩やかに低下している。
先進国と新興国・途上国の成長率の差は、両者の世界全体の国内総生産(GDP)に占める割合の変化に反映されている。07年に71.6%だった先進国のシェアは、18年には60.3%まで低下し、新興国・途上国のシェアは28.4%から39.7%に上昇した。リーマン・ショック後の世界では、新興国・途上国の存在が相対的に大きくなっており、これは中国の経済大国化と密接に関係している。
中国のGDPが世界全体のGDPに占める割合は、07年には6.1%だったが、18年には15.7%に上昇した。米国のシェアは07年が24.8%、18年が24.2%で、それほど下落していない。シェアが縮小したのは欧州連合(EU)で、この間に30.6%から22.1%に下落した。日本も7.8%から5.9%に落ちた。中国の急激な台頭がこのデータからもうかがわれる。
さて、コロナ後の世界である。IMFが先週発表した今年の成長率予測によると、世界全体ではマイナス3.0%、米国はマイナス5.9%、中国はプラス1.2%で、来年はそれぞれプラスの5.8%、4.7%、9.2%である。
習近平指導部は今年のGDPを10年のGDPの2倍に増やすという公約を掲げており、そのためには5%台後半の成長率が必要である。IMF予測の成長率では公約は実現できない。
ただ、その予測に従えば、コロナ後の世界において、米中のGDPギャップはますます縮小し、GDPの米中逆転が現実味を増すことになる。