専欄

新型コロナ禍の中で…中国で慰められる「心温まる話」

 新型コロナウイルスとの闘いで最も懸念されているのが、医療崩壊の危機である。高度な先進医療を提供してきた日本だが、何しろ未知の感染症で、臨床データは圧倒的に少ない。(ノンフィクション作家・青樹明子)

 そうしたなか、日中の若い世代が連携して、日本のコロナ治療に協力している。中国の医療機関が続々と発表している「新型コロナ感染予防と制圧法」に関する報告を日本語に翻訳し、日本の病院や医療従事者に提供しているのである。

 この翻訳チームは、北京外国語大学卒業生が主体となり、SNSでボランティアを募るところから始まった。北京だけではなく、中国全土から志願者が集結したという。資料は難解な医学専門用語が多く、日本語能力に加え、医学的知識も必要になり、一般の翻訳作業とは事情が異なった。それでも多くの日中関係者が手を挙げた。

 チームの中核だった中日友好病院勤務の孟華川さんによると「実にいろいろな人たちが集まった」という。「病院関係で働く人、企業に勤める会社員、何をやっているか分からない人もいた(笑)。中国で東洋医学を学ぶ日本人留学生たちも参加し、日本語の最終チェックをしてくれた」

 翻訳作業は既に第7版まで完成し、70にも及ぶ医療機関、日本医師会、呼吸器学会、感染症学会などに提供されたという。

 先の見えないコロナとの闘いが続くと、心身ともにストレスがたまってくる。暗い話題はもう嫌だ。ほっこりする話を聞きたい。これは中国も同様で、SNSでは多くの「心温まる話」がアップされている。

 封鎖が続いた武漢の街。自転車に乗った一人の男性が、道の向こうにいた警官に小ぶりの箱を投げ渡した。「俺がトルコから背負ってきたものだよ」

 中にはマスクがぎっしりと詰まっている。警官の「名前を聞かせてくれ」との問いに対する答えがカッコいいと、ネット民に受けた。

 「名前?“中国人”さ」

 封鎖された武漢では、食料品を売る市場は真っ先に閉じられた。野菜の特産地として有名な山東省寿光市の農家は、そうした武漢に新鮮な野菜を送り続け、累計2300トンに上ったという。「俺たちはみんな仲間なんだ。危機に助け合うのは当然さ」

 武漢に住む某夫婦。病院の医師や看護師に、24時間体制で食事を届けたという。親戚も加わり、自転車で20キロ先の病院にも届け続けたのである。「最前線で頑張る人たちの心をくじけさせてはいけない」

 高齢者の重症化が叫ばれるなか、若者たちも頑張っている。

 「SARS(重症急性呼吸器症候群)の時、大人たちは子供だったわれわれ90後(1990年代生まれ)を守ってくれた。今度は90後があなたたちを守る!」

 いずれにしても、最も早く聞きたいのは「人類はコロナに打ち勝った!」という朗報である。

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