人口増に伴う環境悪化により、水質汚染が大きな社会問題となっているインドで、日本の中小企業の装置が汚水処理に導入されている。細菌と独自に開発した不織布を用いてトイレなどから出る汚水を処理する方式で、電力を必要とせず維持管理も容易。装置を開発した大成工業(鳥取県米子市)は、これまでインドの2都市で導入を進めており、約13億の人口を抱える巨大市場への進出に挑む。
同社は1983年にこの装置を開発。社員15人の中小企業だが、日本各地の公園や山小屋にあるトイレなど、約450カ所に装置を設置。現在も、毎年10~20件の新設工事を行っているという。
地中にあるタンクに汚水を流し込み、「嫌気性菌」によって汚物を腐敗させ、水を濾過(ろか)した上で特殊な不織布を通して土中に拡散させる仕組み。汚水は無色透明な状態となり、農業用水などに利用できる。下水道に接続する必要がなく、タンクに沈殿する汚物も少ないことから、低コストで半永久的な使用が可能という。
同社は2014年、南太平洋のソロモン諸島で2カ所のトイレに装置を設置した。インドでは昨年4月、国際協力機構(JICA)の事業として、ヒンズー教の聖地であるバラナシの公衆トイレに導入している。バラナシには同教が「聖なる川」とあがめるガンジス川が流れているが、トイレなどの生活排水による汚染が深刻化し、巡礼者の沐浴(もくよく)は危険な状態となっている。JICAは「日本の技術がガンジス川の水質改善につながってほしい」と期待を寄せる。
今年3月には、北部ウッタルプラデシュ州ムザファルナガルの大学寮にも装置を設置。大成工業の松本安弘部長は「下水道の発達している日本では隙間の分野だが、インドでは国土の広さや技術的な問題から多くの需要を感じている。衛生環境の向上に役立ちたい」と話している。(ニューデリー 共同)