海外情勢

新型コロナの緊急事態宣言、各国はどう動いているか (3/3ページ)

 医療体制危惧し13億人封鎖・インド

 インドでは新型コロナウイルス拡大阻止のため、3月25日から21日間のロックダウン(都市封鎖)に入った。13億人が対象となる大規模な封鎖だ。医療体制が未成熟なことから、一度拡大すると歯止めがかからない懸念があり、モディ政権は神経をとがらせている。

 封鎖下では、食料品店や銀行など生活に必要な店舗以外は閉鎖され、事務所や工場、建設現場も休業となった。食料の買い出しなどを除き外出も禁止。電車や地下鉄など公共交通機関も原則として止まっている。

 モディ首相は「経済的な影響はあるが、人命を救うことが最優先だ」とロックダウンの意義を強調した。経済協力開発機構(OECD)によると、インドの2017年の人口1千人当たりの病床数は0・5で、日本(13・1)やドイツ(8・0)などと比較して、大きく差がある。爆発的感染拡大に耐えられる医療体制は整っていない。

 現在、ロックダウンの最大の影響出ているのは雇用面だ。産業が止まり、大量の労働者が職を失った。人口の約十分の一にあたる1億3600万人に影響が出るという試算もある。

 一方、出稼ぎ労働者が農村部に帰省する動きがでており、ウイルス拡散につながる恐れも指摘される。経済への打撃を覚悟してロックダウンに踏み切ったにもかかわらず、感染封じ込めは見通せないインド。モディ氏は29日、社会の混乱を謝罪しつつ「これしか方法はない」と理解を求めた。(シンガポール 森浩)

 湖北省隔離で感染抑制と自賛・中国

 中国政府は1月下旬、新型コロナウイルスの感染が最初に発生した湖北省武漢市の都市封鎖に踏み切り、厳格な移動制限で同省全体を国土から“隔離”した。この結果、省外の感染者は全体の2割以下で推移し、感染爆発は局所的なものにとどめられたが、当局の初動の遅れや情報公開の透明性に根強い批判がある。

 中国当局は1月23日、武漢市民の市外への移動を禁止し、市内の公共交通機関も停止。封鎖措置は湖北省全体に拡大した。さらに武漢市では1カ月以上、居住区からの外出を全面禁止にするなど社会・経済活動を徹底的に停止した。

 全国の多くの都市が春節(旧正月)の大型連休を延長する形で企業活動や学校を長期間休止した。

 2月上旬に3千人以上で推移していた1日当たりの感染者数は同下旬から激減し、現在は外国で感染したケースを中心に数十件程度。中国政府は「歴史上最も勇敢で柔軟、積極的な措置」(外務省報道官)により、世界のために貴重な時間を稼いだと自賛する。

 ただ政府の専門家チームトップ、鍾南山氏らは、湖北省の封鎖が5日遅ければ感染者は3倍に膨らんだとする一方、5日早ければ「3分の1」まで減少できたとも指摘した。また、封鎖された湖北省には全国から4万人以上の医療従事者が派遣されたが医師や病床、防疫物資などが決定的に不足し、医療崩壊が発生。治療を受けられず自宅で死亡する患者が続出した。(北京 西見由章)

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