グーグル、アマゾン、フェイスブック、アップルの頭文字であるGAFAをはじめとしたプラットフォーマーが世界中で注目を集める中、グローバルで中国プラットフォーマーの存在感が大きくなっている。それぞれ検索エンジン、電子商取引(EC)、会員制交流サイト(SNS)を軸に幅広い事業領域に拡大しているBATと呼ばれる百度(バイドゥ)、アリババ、テンセントや、ライドシェアの滴滴出行、民泊の途家などが代表例だ。(野村総合研究所・小宮昌人)
アリババなど存在感
プラットフォームビジネスとは、「需要を持つユーザーに対して、直接サービスを提供するのではなく、供給者のビジネス提供の基盤となるサービス・システムを提供するプレーヤー」だ。中国のプラットフォーマーは、自国市場の大きさや、政府による大手外資ITサービス遮断の歴史、データ規制の緩さなどを背景に拡大してきた。アリババのEC流通総額は90兆円を超え、滴滴は1000都市以上で5.5億人のライドシェアユーザーを有する。中国国内での成長とともに他国へも積極的に展開しており、アリババによる東南アジアのアマゾンと呼ばれるラザダの買収など、大手スタートアップ買収・出資や、現地政府との連携を通じた勢力拡大を図っている。
日本企業の中にはプラットフォーマーの存在を脅威と捉え警戒する企業も存在する。しかし、グローバルでの事業展開、特に単独での顧客接点確保や、市場ニーズ把握のハードルが高い中国市場においては、プラットフォーマーは強力なパートナとなり得る。とりわけ(1)幅広い顧客接点を有していること(2)消費者に対する統合的なデータ・示唆を持っていること(3)技術・製品への圧倒的な投資および購買力を有していること-が主な特徴である。これら特徴を持つ中国プラットフォーマーと効果的に連携していくことが中国市場展開や、日本市場における中国人訪問客のインバウンド展開、さらには共同での新興国展開などで有効となる。
プラットフォーマーとの連携の在り方としては(1)プラットフォーマーの持つ顧客チャネルを活用する(2)プラットフォーマーを「顧客」として製品・サービスを提供する(3)プラットフォーム上でノウハウ・サービスをアプリケーションとして展開する-の3つの方向性が存在する。
日本企業の中でも中国プラットフォームの存在を「機会」と捉え、うまく連携し展開している先行企業が存在する。トヨタ自動車と資生堂のケースを紹介する。
トヨタ、資生堂先行
トヨタはライドシェア企業の滴滴と連携し、自動運転システム「ガーディアン」の提供やライドシェア専用車両の開発を行っている。その結果として、トヨタが展開するモビリティー・サービスプラットフォームへのデータ蓄積・サービス開発への応用を図る。自動車業界にとってライドシェアは自動車新車販売台数を減少させる要因ともなり得るが、滴滴の有する顧客基盤・データを「機会」と捉え、むしろ積極的に提携を行っている事例である。