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新型コロナ、攻守2段階の補正予算検討 “止血”と需要喚起策

 政府は新型コロナウイルスの感染拡大による不況を回避するため、経済活動の自粛に伴う緊急措置と、感染終息後に発動する景気浮揚策の2段階からなる追加経済対策を講じる見通しだ。2020年度補正予算の編成による財政支出は少なくとも10兆円超との見方が出ているほか、消費税を含む減税にも期待感が強まっている。政策運営が“危機対応モード”に入る中、景気判断の公式見解を示す3月の月例経済報告では総括判断を下方修正する方向だ。

 安倍晋三首相は16日の参院予算委員会で、「日本経済を再び成長軌道に戻すため、今までの発想にとらわれない対策を取る。政府・与党で、覚悟を持って、メッセージ性があるものを練り上げたい」と強調した。

 感染拡大の防止を優先する現状では、人の往来を活発にする景気てこ入れ策は難しく、第1、2弾の緊急対策でも講じた暮らしや雇用の“止血”が先決だ。ただ、終息後は国民の「活気ある笑顔を街に取り戻す」(安倍首相)ため、大規模な需要喚起策を講じる。6月で終わるキャッシュレス決済ポイント還元の延長や、国内旅行費の割引などが浮上している。経済対策はこうした攻守の対応策を一体化したものが想定される。

 一方、安倍首相が掲げた「メッセージ性」の具現化には、経済対策の規模が問われる。4月に補正予算を編成すればリーマン・ショック以来となるが、09年4月の経済危機対策は財政出動15兆4000億円、事業規模は56兆8000億円に上った。政府は昨年12月に事業規模26兆円の総合経済対策を策定しており、新たに30兆円規模の対策を積み増せば“リーマン級”になる。

 「今までの発想にとらわれない対策」として与野党で導入論が急浮上しているのが減税措置だ。特にモノやサービスの値段に直結する消費税の減税は暮らしの負担を軽減する。ただ、法改正に時間がかかる上、企業のシステム改修費用も膨らむため政府内に慎重論が強い。自粛経済で打撃を受ける中小企業の負担軽減に向け、固定資産税の減免なども課題になりそうだ。

 一連の危機対応策を講じるために、政府が18年1月から維持してきた「穏やかに回復している」との総括判断は修正が避けられない。3月下旬に示す月例報告では判断が引き下げられる見通し。政府は景気に対する厳しい認識を鮮明にした上で、4月の経済対策の編成に臨みたい構えだ。(田辺裕晶)

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