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新型コロナがアジアに下押し圧力 新興国経済への影響は (1/2ページ)

 昨年末に中国で発生した新型コロナウイルスは、足元では世界に広がりをみせるなど、世界経済の新たなリスク要因となっている。中国国内での生産停止の動きは、近年中国を中心とする形で深化してきたサプライチェーン(供給網)の目詰まりを招き、結果的にアジア新興国全体の生産の足かせとなりつつある。さらに、中国政府は春節(旧正月)連休の最中から海外への団体旅行を禁止しており、中国人旅行者増大の恩恵を受けてきたアジア新興国では、既に関連産業に悪影響が出る動きもみられる。ここではアジア新興国経済にいかなる影響が出るかを考察する。(第一生命経済研究所・西浜徹)

 供給網崩壊で減産

 昨年末に中国中部の湖北省武漢市で発生した新型コロナウイルスは、中国国内で多数の感染者および死亡者を出す事態となり、中国政府は春節連休を延長させる対応を取った。さらに、その後も事実上の休業延長措置が取られたほか、3月初めに予定されていた全国人民代表大会(全人代=国会)の開催が先送りされるなど、2002~03年に流行した重症急性呼吸器症候群(SARS)を上回る悪影響に直面している。なお、足元では生産回復に向けた取り組みが進んでいるとみられるものの、依然としてフル稼働には程遠い状況が続いており、1~3月の実質国内総生産(GDP)成長率には大幅な下押し圧力が掛かることは避けられない状況にある。

 また、アジアでは近年の中国経済の高成長を背景に、中国を中心とする形でサプライチェーンが構築されており、中国国内での生産停止の動きは多くのアジア新興国にとって玉突き的に減産ないし生産停止圧力となることが懸念される。事実、サプライチェーンの密度が高いとされる自動車関連産業では、素材や部材不足を理由に工場が操業停止状態に追い込まれる事態も出ている。さらに、サプライチェーンを通じて中国とアジア新興国は川上と川下の間を行き来する関係となっており、結果的にアジア全体の生産にとって大きな下押し圧力となることも避けられそうにない。

 観光関連産業に打撃

 さらに、近年の高い経済成長を背景に中国では海外旅行が活発化しており、アジア新興国のなかには外国人旅行者に占める中国人旅行者の割合が高まる動きもみられる。なかでもここ数年、春節期間中の旅行先として上位に挙がっているタイでは、昨年の中国人旅行者による消費額がGDP比で3%を上回る水準となるなど、観光関連産業にとって中国人観光客は切っても切れない関係となっている。また、ベトナム、台湾や韓国などでは、外国人旅行者に占める中国人の割合が3割を上回るなどタイに比べて高い。中国政府は春節期間中の1月末以降、海外への団体旅行を禁止する措置を発表したが、当該措置による打撃を受けるアジア新興国は少なくないであろう。

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