米アカデミー賞で韓国映画として初めて短編ドキュメンタリー賞の候補となった「不在の記憶」に注目が集まっている。2014年に韓国の修学旅行生ら300人以上が死亡・行方不明となったセウォル号沈没事故の惨劇が題材で、動画投稿サイト「ユーチューブ」での視聴数は18日までで250万回を超えた。
「助けてください! 沈没しそうです」。約29分の作品は、14年4月16日午前8時52分、韓国南西部珍島沖合を航行中に突然傾き始めた旅客船からの救助を求める乗客の通報から始まる。
他にも救助当局と大統領府関係者の通話内容や乗客が残した映像、生存者や遺族の証言を記録している。音声によるナレーションは一切ない。昨年4月に「IN THE ABSENCE」という英題でユーチューブに公開された。
イ・スンジュン監督は、救助の遅れや、ずさんな対応を続けた朴槿恵(パク・クネ)前政権の失態に焦点を当て、韓国政府が機能不全に陥っていたことによる「国家の不在」が惨事を拡大させたとしている。
製作には遺族会が関わり、アカデミー賞授賞式の会場にも遺族が同行。受賞は逃したものの、米国内で報告会が開かれるなど事故を振り返る機運を高めた。
一方、聯合ニュースによると、韓国の検察は18日、沈没事故の救出作業を指揮していた海洋警察庁の金錫均元長官ら計11人を、業務上過失致死傷などの罪で在宅起訴した。救出に必要な注意義務を尽くさなかったことで多数の犠牲者が出たと判断した。(ソウル 共同)