プーチン・ロシア大統領が提案した憲法改正をめぐり、核大国の地位明記や同性婚禁止の盛り込み、領土割譲禁止など、議論が多岐に及び百家争鳴の様相を呈している。改憲を急ぐ政権は改憲案を3月中に上下両院で通過させ、4月中旬に全国投票を実施、採択するスケジュールを描くが、遅れも懸念されている。
プーチン氏は1月20日、「国民生活の向上」と「国家権力機構の再編」の2分野に絞った改憲案を下院に提出、既に審議入りした。その一方、改憲案を審議する作業部会には500を超す提案が寄せられている。
同氏が出席した2月13日の作業部会会合では「第2次大戦の勝利国、核大国としての地位明記」「インフレ率に応じた賃金引き上げ」「男女夫婦による伝統的な家族制度擁護」「ロシア領土の割譲禁止」など多様な主張が噴出。同氏は「議論を無制限に引き延ばすべきではない」と述べ、取りまとめを急ぐ姿勢を示した。
改憲への「国民の明確な支持」を取り付けるため、プーチン氏は全国投票の実施を重視する。翌14日には中央選管や地方自治体に準備を命じた。
有力紙ベドモスチによると、有権者は大統領提案の国民生活の向上に関する部分に強い関心を寄せており、全国投票では7割超の賛成で改憲案を承認する見通し。一方、2024年に任期が切れるプーチン氏が自らの影響力保持を狙っているとされる国家機構改革への関心は低いとしている。(モスクワ 共同)
【用語解説】プーチン氏の改憲提案
プーチン・ロシア大統領は1月の年次報告演説で、国民生活の向上や大幅な政治機構改革を軸とする憲法改正を提案した。機構改革では(1)首相や閣僚を決める大統領の権限を抑制し、下院の権限を強化する(2)大統領の諮問機関「国家評議会」を憲法上の正式機関とする(3)大統領が上院と協議をした上で治安機関トップを任命-などが提案の柱。2024年に任期が切れるプーチン氏が、退任後も政治的影響力を残す布石との見方がある。(共同)