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デジタル通貨、研究本格化 各国で検討加速、カンボジアが初導入へ (1/2ページ)

 日本銀行を含む多くの国・地域の中央銀行で、現金に代わる決済手段「デジタル通貨」の研究や発行の検討に乗り出す動きが加速してきた。米交流サイト大手フェイスブックが昨年6月、同通貨の発行構想を発表したのに触発された。中銀デジタル通貨(CBDC)は近くカンボジアで初めて導入される見通しで、世界的に普及すれば通貨の歴史に名を刻むことになる。

 欧州主導

 「デジタル通貨の活用の可能性に関する知見を共有する」。日銀は1月21日に欧州中央銀行(ECB)、英イングランド銀行など5つの中銀や、多くの中銀が加盟する国際決済銀行(BIS)と連携し、CBDCを研究するグループを設立したと発表した。民間銀行の経営への影響などについて研究を進め、年内をめどに報告書をまとめる。

 日銀は現時点で発行計画はないと説明しているが、雨宮正佳副総裁は「技術革新のスピード次第で、デジタル通貨に関する世の中のニーズが高まる可能性がある。的確に対応できるよう備えるのは重要だ」と強調した。

 グループは、ECBの専務理事だったBISの幹部とイングランド銀の副総裁が共同で議長を務める。二大経済大国である米中の中銀は入っておらず、金融界では「欧州主導の枠組み」との声が上がっている。

 フェイスブックが発表したデジタル通貨「リブラ」を使った送金や決済サービスの提供構想に、欧州側が強い懸念を抱いたのは間違いない。同社は世界人口の35%に当たる約27億人のユーザーを抱えているとされ、大量のリブラが流通すれば、通貨の供給量や金利を調節して物価安定を図る中銀の政策が機能しなくなる恐れがあるからだ。

 問題意識

 「デジタル人民元」の発行を目指す中国が通貨覇権を将来握りかねないとの警戒感や、新興国の台頭にもかかわらず、米ドルが基軸通貨の地位を維持していることへの不安も欧州側にくすぶる。

 こうした問題意識は日本側と共有しやすく、米中を除いたグループをつくる素地を形成したようだ。一方で日欧の動きを牽制(けんせい)するかのように、米国の中銀にあたる連邦準備制度理事会(FRB)の幹部は2月5日、CBDCの研究を進めていることを明らかにした。

 デジタル通貨は財産的価値を持つ電子データで、スマートフォンを使って金融サービスを安価に利用できる。暗号資産(仮想通貨)のビットコインなども含まれ、データの改竄(かいざん)が難しいブロックチェーンと呼ばれる技術で管理する。

 1月にBISが公表した調査結果によると、対象となった66中銀の80%がCBDCに関する研究など何らかの作業を進めていることが分かった。10%は3年以内に、20%は6年以内に発行する可能性があると回答した。

 カンボジアの中銀は日本企業ソラミツ(東京)の技術を採用し、実用化に向けたテストを始めた。同社は「テストがうまくいけば3月末までに導入可能と中銀側から聞いている」と説明している。現金不要のキャッシュレス決済が進む中国、スウェーデンや、ドミニカなどが加盟する東カリブ諸国機構、バハマの各中銀は21年に導入するとみられている。

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