宇都宮市内のバスと一部鉄道を無料で乗降できるフリーパスを活用し、交通行動の変化を調査した「宇都宮MaaS(マース)社会実験」の分析結果がまとまった。分析によると、無料パス導入によりバスや鉄道の利用が通常より増加するなど、交通手段の変化や外出機会の増加、行動範囲の拡大が確認された。
MaaSは「モビリティ・アズ・ア・サービス」の略。バスや鉄道、タクシーなど、複数の移動手段をまとめて提供するサービスで、スムーズな移動を実現し、利便性の向上を目指す。早稲田大学や交通事業者、市などから組織する実行委員会が行った今回の実験では、「MaaS」の潜在的需要があるとの結果も得られた。市では令和4年開業予定の次世代型路面電車(LRT)の運行を見越し、将来の公共交通システムの検討に役立てる考えだ。
実験では昨年9月6~30日、市内に通勤通学する18歳以上のモニター216人に無料パスを配布。市内を運行するバスや東武鉄道の一部区間を無料で乗り放題にし、専用のスマートフォン用アプリを用いて位置情報や移動目的などのデータを収集した。
データを分析した結果、無料パス配布前後では、配布後の利用率がバスで約1・4倍、鉄道で約3・8倍まで伸びた。市外縁や市外への移動が増え、行動範囲が大幅に拡大した。
また実験に伴うアンケートでは、乗り換え案内や時刻表検索などの機能、バスの位置情報提供サービスなど、公共交通の運行状況を提供するサービスを求める回答が60~70%を占めた。また、スマートフォンを利用した予約やキャッシュレス決済の充実を求める回答が53・6%と多かった。
実行委では「複数の交通手段の情報や予約・決済サービスが統合されたMaaSの潜在的需要が確認された」と結論。MaaS導入による地域への経済効果や事業採算性に関する検証を、今後の課題としている。(松沢真美)