米政府を通じて米国製の防衛装備品を代金前払いで購入する「対外有償軍事援助(FMS)」で、米側からの納入や過払い金精算の遅れが相次いでいる。それでも、日本周辺の安全保障環境が悪化する中、国防の装備体系は最新鋭の米国製装備品に頼らざるを得ない。防衛省は事態改善を急ぎ、米側に適切な対応を求めている。
防衛省外局の防衛装備庁の武田博史長官は22日、米国防総省傘下の国防安全保障協力局のフーパー長官らと防衛省で協議。河野太郎防衛相は24日の記者会見で「進展があった」とし「問題解決へペースアップしていきたい」と述べた。
日米協議では、在米の装備庁職員と米政府担当者の会議を定例化し、情報共有を強化する方針を確認。防衛省にも自衛隊への納入状況を正確に把握できていないなど瑕疵(かし)があり、在米職員を増員することにした。
ただ、抜本的な解決策が示されたわけではない。
FMSは米側が見積もり価格と納期予定日を決め、代金は前払いさせる。同省によると、昨年度末時点で132件(計326億円分)が予定日を過ぎても納入されず、日本の防衛計画に影響を及ぼしている。見積もり以下の価格で済んだ場合の過払い金も263件(計493億円分)が未精算のまま。「米側の管理がずさん」(同省幹部)なため、製品は届いても売買が完了しないケースもある。
米側の言い値で、納入前の売却中止もできるFMSには「言いなり」との批判がある。ただ、機密情報保護の観点から企業から直接購入できない最新鋭の装備が手に入る。「日米の開発力の差を考えればFMSは国益にかなう」(同省職員)という。
近年はFMS調達がふくらみ、10年前は500億円程度だったのが4千億~7千億円超で推移。無人偵察機グローバルホークや地上配備型迎撃システム「イージス・アショア」などが代表的だ。中国が海洋進出を強める南西方面や、北朝鮮の弾道ミサイル発射に対する防衛力強化につながる装備品で、国内企業は製造できない。
安倍晋三首相は24日の参院本会議で国内でも高性能の装備品を開発できるよう「重要技術に重点的に投資する」と述べた。ただ、日本の技術力が米国に追いつくのは難しく、FMS頼みは当面変わらないとみられる。(田中一世)