生かせ!知財ビジネス

台湾総統選の結果で、知財の世界における台中間の対応はどう変わるか

 台湾の弁護士・弁理士・黄瑞賢氏に聞く

 台湾総統選挙は民進党の蔡英文氏の圧勝に終わった。今後、知財の世界における台中間の対応はどう変わるのか。日本や中国の知財にも詳しく、近く日本人向けの台湾専利法の専門書を出版する維新国際専利法律事務所の黄瑞賢所長(台北市、弁護士・弁理士)に聞いた。

 --率直に、選挙結果の印象を伺いたい

 「台湾の人の多くは今後の中国との外交関係について現状維持を考えていると思う。日米欧との連携を望む一方で、今後も中国からの圧力は避けられないため、バランスを見て進まねばならないのが現実であるからだ」

 --業務上、中国から、例えば中国企業の顧客を回さないといったような、圧力は考えられるか

 「過去、圧力を感じたことはない。中国企業は台湾の法律事務所の業務能力、質を最も重視する。政治的信条はわずかな要因にすぎない。ビジネスはビジネス。事実、台湾の大手特許事務所においては独立志向の事務所が中国の大手企業の顧客を多数抱えていたりする」

 --中国特許庁の対応はどうか

 「例えば中国への特許出願で、中国審査官の拒絶理由通知は、中国企業は1回、多くて2回。外国企業は3、4回あるのが普通だ。台湾企業は中国企業並みに扱われることは一切なく、他外国企業と同じ。総統選の結果、台湾企業への対応が厳しくなることは考えられない」

 --台湾の企業対応、知財政策は今後どうなるか

 「台湾企業の対中知財活動に一定の影響はあるだろう。従来政策(創新産業や新南向政策など)は進めていくと思う。米国や日本との緊密な連携関係は最重要で、知財政策でも同じ。具体的にはまだ言えないが、台湾の知財制度を米国や日本へもっと近づけていくのでは」

 --例えば、どういうことか

 「特許侵害訴訟に関して、米国や日本の特許法では直接侵害と間接侵害が認められるが、台湾や中国には間接侵害規定がない。過去15年間で少なくとも2度、台湾特許法改正で間接侵害導入が提案されたが、できなかった。台湾企業は中国企業との合弁企業が多く、中国企業が訴えられると台湾企業が連座する可能性があるのに加え、台湾の中小企業保護の観点があったからだ」

 --今後、日本に期待することは

 「外国から台湾への特許出願で一番多い国は日本だ。また、日本の特許庁は多くの貢献をしてきてくれた。台湾との連携をさらに緊密化し、深めてくれればと思う」(知財情報&戦略システム 中岡浩)

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