建築ブームの影
カンボジアでは毎年7%を超える高い経済成長率が続いている。それを支える産業の一つが建設業だ。国内でも都市部を中心に、建築ブームが長く続いている。カンボジア中央銀行によると、セメントや鉄鋼製品など建築資材の19年の輸入額は15億ドル(約1642億円)に及び、18年の1.5倍に伸びたという。また、19年に建設を認可した事業は4446件あり、前年より55%増えた。これらの事業への投資額は93億ドルで、前年比78%増だ。
プノンペン・ポスト紙によると、昨年の建設事業の多くが、シアヌークビルを舞台とした中国資本だという。シアヌークビルの倒壊事故では、ビルのオーナーが中国人だったこともあり、次々に流入する中国資本が拙速な工事や粗悪な資材の利用の背景にあるとして対中感情が悪化する事態も招いた。
今回、ケップで事故を起こした建物はカンボジア人の所有。相次ぐ倒壊事故を、中国マネーの弊害としてではなくカンボジア社会の問題としてとらえる機運が高まっており、「安全の仕組みづくり」が急務となっている。(カンボジア邦字誌「プノン」編集長 木村文)