海外情勢

ベトナム高速鉄道計画迷走 南北結び6兆円超 国会審議進まず

 ベトナムを南北につなぐ高速鉄道計画が迷走している。約580億ドル(約6兆3500億円)を投じて北部の首都ハノイと南部の商都ホーチミンの約1500キロを最速5時間半で結ぶ構想に「コストがかかりすぎる」と政府内で異論が噴出。政府は10月から国会審議に入る予定だったが、来年5月以降に延期した。議論の着地点は不透明だ。

 運輸省がまとめた事業案ではハノイとホーチミン間を2020年から2段階に分けて整備する。まずハノイ-中部ビン間とホーチミン-中部ニャチャン間を完成させ、その後50年までにビンとニャチャンを結ぶ。最高時速は約350キロ。事業費は官民連携(PPP)方式を導入し、国が8割、民間が2割を負担する。

 運輸省は今年2月、グエン・スアン・フック首相に事前調査報告書を提出したが、巨額の国費負担に懸念を示す計画投資省が7月、運行速度を200キロ程度に落とすことで、事業費を260億ドルに抑える対案を示した。

 南北に細長いベトナムではハノイやホーチミンに比べ中部地域の開発が遅れ、発展を促すために2大都市をつなぐ高速鉄道に大きな期待がかけられてきた経緯がある。

 10年にも計画が国会に上程されたが、膨大な事業費や採算性への不安から否決。共産党が一党支配するベトナムで、大規模な国家プロジェクトに国会が「ノー」を突き付けるのは異例だった。

 高成長が続くベトナムで、運輸省は急増する旅客需要に対応することも理由に高速鉄道事業を改めて推進してきたが、一方でベトジェットエアなど格安航空会社(LCC)の台頭が著しい。経済専門家は「空路やバス網の発展が著しく、高速鉄道が対抗するのは困難だ。当面は航空インフラや道路の整備に注力すべきだ」と指摘する。

 10年に頓挫した構想には日本の新幹線方式の導入が盛り込まれていた。かつてベトナム側に振り回された格好になった日本企業の関心は構想の再浮上後も薄い。ある企業関係者は「実現性は半信半疑。当面は様子見だ」と話した。(ハノイ 共同)

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