海外情勢

ネパール、中国と鉄道計画 首都-チベット間 脱インド依存狙う

 中国、インドに囲まれた内陸国ネパールが、首都カトマンズと中国チベット自治区を結ぶ鉄道の建設を計画している。2029年開通を目標として中国と協力。背景にあるのは、歴史的につながりが深いインドへの過度の依存だ。ネパールのオリ政権は、インドの意向が国内経済を左右しかねない現状に危機感を抱いており、中国との関係強化に動いている。

 鉄道が通るとされる中国との国境の町ラスワガディ。中国側から物資を運ぶため、出国を待つネパールのトラックが列を作っていた。中国側の入管施設は立派な建物で、トタン屋根のネパール側施設との差が際立つ。

 カトマンズからラスワガディまでは崖沿いの悪路を通らなければならず、標高2000メートルを超える場所もある。約150キロの行程で、車で8時間ほどかかる。15年4月のネパール大地震の後、主要通商路の閉鎖により代替路として使われるようになったが、整備が追い付かないまま大型トラックも行き交う。

 30代の運転手、ドルジェ・シェルパさんは「雨期は危険だ。土砂崩れで通行止めになることもある」と説明。鉄道が計画通りに整備されれば、カトマンズからのアクセスが飛躍的に向上することになる。

 中国の巨大経済圏構想「一帯一路」の一環とされる鉄道計画が明るみに出たのは、16年3月だった。オリ首相の訪中時に議題に上ったとされている。

 半年前の15年9月、親インドの少数民族が権利向上を求めてインド国境を封鎖。ネパール大地震からの復興期に、国内は燃料不足と物価高騰に見舞われた。封鎖は16年2月まで続いた。インドが少数民族を支援したともいわれている。

 ネパールにとってインドとの貿易は輸出総額の57%(17年度)、輸入総額の65%(同)を占める。オリ政権は国境封鎖でインド依存の危うさを再認識し、中国に急接近したとみられている。

 鉄道計画の交渉に携わった関係者らによると、ネパール側の建設費は27億ドル(約2923億8300万円)と試算されている。ネパールが3割、中国が7割を負担する方向という。

 インドは中国と国境紛争を抱えており、ネパールと中国の接近は安全保障上の懸念となる。東京の運輸政策研究所(現・運輸総合研究所)に所属した経験もあるネパールのインフラ専門家、スルヤ・ラージ・アチャリエ氏は「鉄道建設はネパールをめぐる情勢を一変させる」と指摘。インドの出方が事業に影響を与える可能性もありそうだ。(カトマンズ 共同)

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