海外情勢

ヤシ殻を炭化し発電燃料に 日系企業、インドネシアで試験生産

 アブラヤシの殻を再利用して発電用の燃料に-。東京の企業がパーム油を生産する過程で捨てられるこの殻を炭化させ、バイオマス燃料とする際の新技術を開発。パーム油の生産地インドネシアで試験生産を始めた。同社は「石炭の代替品として販売していきたい」と意気込んでいる。

 企業はバイオマス燃料の開発を手掛ける「DSJホールディングス」。7月、北部バタム島のカビル工業団地内の工場で、同社が「ガイア環境技術研究所」(仙台市)とともに開発した炭化機をインドネシア人従業員らが試験運転していた。

 パーム油はアブラヤシの果実を搾って作られる植物油で、マーガリンやせっけんなどの食品や日用品に幅広く使われる。主要生産国のインドネシアやマレーシアでは生産量が増える一方、大量に発生する殻や古木などは野積みのまま放置された。ウイルスや病原菌が広まる恐れがあり、古木などは燃やすと有害物質が出る問題にも直面した。

 DSJによると、殻から小石などを取り除き、酸素を遮断した状態で高温で熱分解することでウイルスや菌を除去する「無害化」に成功。他社も炭化機を開発しているが、より短時間で処理でき熱効率も良いという。石炭火力発電やバイオマス発電の燃料にと売り込む。

 殻や古木といった廃棄物の処理は長年の課題だった。原泉社長によると、2011年ごろ、インドネシア人研究者に「日本の技術で何かできないか」と相談され一念発起したという。

 バタム島の現地工場の責任者は日本に留学し、茨城大と名古屋大大学院を修了したアレキサンダー副社長。日本で就職していたが「地元州政府の奨学金で留学できた。いつか地元に恩返ししたい」と18年に原社長の誘いで入社した。

 DSJは月5万トンの製造を計画し、将来的な増産を目指す。設備投資に必要な資金調達に向け、国内外の企業と交渉中という。原社長は「ヤシ殻は石炭の代わりになる。この事業に人生を懸けた」と力強く語った。(バタム 共同)

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