国内

日米貿易交渉 大枠合意も予断許さず 署名までトランプ氏の出方注視

 日米貿易交渉が首脳レベルで大枠合意に達した。日本は完成車の関税撤廃見送りと引き替えに、他の工業品で幅広い関税引き下げを認めさせ、農産品の市場開放をも抑えることができた。一方の米国側は、来年11月の大統領選で再選を狙うトランプ大統領が、「(輸入自動車の流入が)米自動車産業や新技術への投資能力を損なう」と批判してきた完成車輸入で、日本の求める関税撤廃を拒み通す形を作るなど、日米が成果と痛みを分け合う決着となった。

 「ライトハイザー氏との交渉は今回が最後」。茂木敏充経済再生担当相は閣僚級協議で大枠で合意した後の24日の記者会見でこう明かした。

 日本側にとって、今回の条件は、環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)の水準以上の関税撤廃、引き下げがないものだった。交渉が長引けば、これを上回る妥結は見込めない-。こんな判断が働いた。

 一方の米国側も、直ちに米国産牛肉にかかる38.5%の関税を削減し、段階的に9%にするなどTPPと同条件を日本に認めさせたこともあり、妥結に傾いた。貿易交渉とは別に、飼料用約250万トンのトウモロコシを日本が購入することでも合意した。

 この結果、通常数年かかるとされる2国間交渉がわずか1年程度で決着する異例の進展となった。

 日本側にとっては、今回の交渉において、農業など1分野で先に合意せず、工業品などを含めて全てを1つのパッケージとしてまとめ、「全体でバランスを取る」協議にこだわったことも奏功した。米国側も、TPPのような多国間交渉は「複雑で時間がかかる」(トランプ氏)うえ、米国のような大国でも少数派の立場になる場面もあり、妥協を迫られかねないと昨年、離脱を表明。そのうえで、米国産トウモロコシの新たな輸出枠など、日本側の妥協を引き出せたことは、今後のトランプ氏の選挙戦でのアピール材料になりそうだ。

 ただ、9月の最終合意に向けて、トランプ氏の出方は読み切れない。「通商拡大法232条」に伴う高関税で日本の動きを制しつつ、さらに有利な条件獲得を狙い日本を寝技に引き込むのではないか。最後の署名まで予断は許されない。 (飯田耕司)

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