金融庁は28日、来年6月までの重点施策をまとめた「金融行政方針」を発表した。地方銀行への監視を強化し、収益力や財務の健全性に問題がある場合は業務改善命令を出すことがあるとした。超低金利で厳しい環境に直面している地銀の経営を将来にわたって安定させ、地域経済に大きな打撃を与える破綻を防ぐのが狙いだ。膨大な保険の不適切販売が発覚したかんぽ生命保険と日本郵便には販売体制の抜本的な見直しを求める。
地銀の経営統合などによって財務内容や収益が改善すれば、金融機関が破綻に備えて積み立てる預金保険の料率を引き下げる方向で検討することも盛り込んだ。金融庁は、地域での融資シェアが高まる統合でも10年限定で認める政府の方針と合わせ、地銀の再編を後押しする。
監視強化では、金融機関に早めに経営改善を促す既存の「早期警戒制度」を積極的に活用する。制度に沿って、本業のもうけを示す実質業務純益などの経営指標や融資の状況、価格が下落して損失になりかねない国債や株式といった有価証券の保有状況を点検する。
問題がある場合は、まず原因や改善策を聞き取り調査する。改善計画の確実な実行を迫る必要があると判断すれば、銀行法に基づいて報告を求めたり、業務改善命令を出したりする。
金融庁の調べでは、全国の地銀105行のうち45行が、2019年3月期に顧客向けサービス業務の損益が2年連続で赤字だった。5年以上の連続赤字は27行に上り、金融庁は「黒字転換が進んでいない」と懸念する。
金融行政方針には、米交流サイト大手フェイスブックが暗号資産(仮想通貨)「リブラ」の発行を計画していることを踏まえ、海外の当局と連携して規制の在り方を議論することも明記した。