国内

マグロ漁獲枠拡大 大型魚中心の増枠には不満も

 太平洋クロマグロの厳しい資源管理の下、漁獲上限を守るためマグロの放流や休漁に苦慮する漁業者からは「何としても増枠を実現してほしい」と切実な声が上がる。水産庁は昨年の教訓を踏まえて各国の理解を得やすいとみる大型魚を中心に増枠を目指すが、その分、沿岸漁業に多い小型魚の増枠幅は小さくなる。合意を優先した方針とも言えるが、今後の丁寧な説明が求められそうだ。

 一本釣りで知られる長崎・壱岐の勝本町漁協では小型マグロが生計を支える。漁獲規制のため休漁で稼ぎが激減し、若手が次々にやめているという。大久保照享組合長は「将来のために資源管理は大切だが、漁業者がいなければ将来もない。増枠は悲願だ」と訴える。

 新潟・佐渡の内海府漁協では沿岸に仕掛けた定置網に大量のマグロが入ることがある。だが割り振られた漁獲枠は大型魚40トンと小型魚20トン。漁期が終わらないうちに枠を超過する恐れもあり、漁業者は出荷する分だけを漁獲し、残りは放流せざるを得ないのが実情だ。

 作業はマグロをたも網で一匹ずつすくうなど骨が折れ、同漁協の本田裕敏組合長は「余分な労力を使って、お金を海に捨てているような気分だ」とため息をつく。

 水産庁は今回、マグロのサイズで増枠要求に差をつけ、大型魚を手厚くした。同じ重量を漁獲しても小型魚の方が数が多くなり、資源減少への影響が大きい。親魚より将来親になる小型魚を残したほうが資源回復にもつながりやすいため、昨年反対した米国などの批判をかわせると期待する。

 ただ一本釣りや定置網の漁業者には、沖合のまき網漁業で大型魚を漁獲する大手企業に対する優遇と映る可能性もある。京都府伊根町の定置網漁業者は「沿岸漁業にもメリットがあるのかどうか、国は丁寧な説明をしてほしい」と要望した。

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