統合型リゾート施設(IR)に関する政府の基本方針策定のスケジュール感が明らかになってきたことで、誘致の意向を正式表明している大阪府・市、和歌山県、長崎県だけでなく、北海道や横浜市なども前向きな動きを見せ始めるとみられる。
IR実施法は国内で最大3カ所のIRを認めている。誘致合戦の「トップランナー」(松井一郎大阪市長)と自他共に認めるのが大阪府・市だ。
大阪府・市は、大阪湾の人工島で2025年の大阪・関西万博前のIR開業を目指す。政界を引退した橋下徹氏が知事だった約10年前からIR誘致を提唱し、ギャンブル依存症などへの懸念から他の自治体の動きが鈍い中、着々と準備を進めてきた。近畿圏への経済波及効果を年7600億円と弾き、米MGMリゾーツ・インターナショナルなど海外事業者の関心も高い。
誘致意向を表明していた長崎県佐世保市のIR担当者は「基本方針が示されれば、すぐに自治体としての方針を決めたい」と打ち明ける。すでに香港系のアゴーラ・ホスピタリティー・グループなど6社が具体的な進出計画の構想を披露している。
他の自治体や事業者も基本方針案の公表後は誘致、進出の是非をより判断しやすくなる。
「白紙の状態」(林文子市長)としてきた横浜市は、IRの事業性などに関する住民向けの説明会を実施した。横浜商工会議所は7月、市に対して迅速な判断を要請したが、一部では反対も根強く、まとまっていない。千葉市は民間事業者からIRの経済効果などに関する意見募集を始める。東京都も水面下で誘致のメリットとデメリットを見極めているようだ。
外国人観光客の人気が高い北海道は誘致の判断を明らかにしていないにもかかわらず、米モヒガン・ゲーミング・エンターテインメントや米ハードロック・インターナショナルなども進出を表明するなど事業者が前のめりになっている。
国土交通省は25年ごろの開業を目指し、全国で3カ所のIR候補地を選定する。(大坪玲央)