前回北京を訪れたときに、多くの友人たちが語っていたのが、テレビドラマ「都挺好(オール・イズ・ウェル)」についてである。「ひとごとじゃない」「身につまされる」「中国で最も大きな問題だ」…。(ノンフィクション作家・青樹明子)
ドラマのテーマは多岐に渡る。「(封建的な)男児重視」「ニートの実態」などで、なかでもメインは「親の老後」問題である。
ドラマでは、一家の母親が亡くなった後、一人になった父親を誰が引き取るのかという現実に直面する。妻の反対で長男は離婚の危機に陥り、ニートだった次男も妻と離婚。子供の頃から邪魔者扱いされてきた娘が、父親の認知症という事態に向き合わなければならなくなる。中国の認知症患者は既に1000万人といわれている。
「養児防老(子供は老後の備え)」というのは中国人の基本的な価値観だが、「それは既に笑い話になった」とずばり述べたのが、中国で最も人気のある有名キャスター、白岩松さんだ。白さんはいくつかのエピソードを紹介している。
まずは湖北省。警察が安全検査のため通行車を調べていたところ、後部トランク部分にうずくまるように座る高齢女性を発見した。車には女性の息子と妻、4歳の孫が同乗しており、子供を寝かせるために母親を荷物置き場に追いやったようだ。車は、女性が息子一家と同居する際に渡した老後資金で購入したものである。