財務省が19日発表した5月の貿易統計(速報、通関ベース)によると、輸出から輸入を差し引いた貿易収支は9671億円の赤字となり、赤字幅は前年同月比67・5%増えた。赤字は4カ月ぶりで、中国向けの輸出が1割近く減るなど、全体として輸出の弱さが目立った。5月に米中貿易摩擦が激化した影響が出始めている可能性があり、日本企業への影響が今後も広がりそうだ。
全体の輸出は7・8%減の5兆8351億円で、6カ月連続の減少。韓国向けの半導体製造装置や中国向け自動車部品などが大きく減った。輸入は1・5%減の6兆8022億円。アラブ首長国連邦(UAE)からの液化天然ガスなどが減った。
5月はゴールデンウイークがあるため、企業の生産活動が減り、輸出も減少して貿易赤字となる傾向が強い。過去を遡(さかのぼ)っても5月は9年連続の赤字となっている。ただ、みずほ証券の稲垣真太郎マーケットエコノミストは「大型連休を踏まえても輸出は弱く、米中貿易摩擦が激化した影響が出ているとみるべきだ」と話す。
トランプ米政権は5月、中国製品2千億ドル(約22兆円)相当の輸入品に対する関税率を10%から25%への引き上げを実施。その影響で中国製品の製造に使われる機械や部品を提供する日本企業の輸出も減っているのだ。貿易統計でも、中国向けは半導体製造装置(27・5%減)や自動車部品(19・7%減)などが大きく落ち込んだ。
米中貿易摩擦の輸出への影響について、伊藤忠総研の武田淳チーフエコノミストは「6月以降に、さらに顕著に出てくるだろう」と話す。関税引き上げの影響が本格化するのに加え、米国による中国の通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)への禁輸措置に伴い、パナソニックが華為との取引中止を社内に通達するなど国内企業の「華為離れ」が進んでいるからだ。28、29日の20カ国・地域(G20)首脳会議(サミット)に合わせ、米中首脳会談も開かれる見通しで、議論の行方に注目が集まっている。(蕎麦谷里志)